2022 Fiscal Year Annual Research Report
Cognitive science of "Mushin"
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20K20863
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 美吏 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 准教授 (70548445)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 無心 / 東洋思想 / 伝統 / 自己超越 / 身体技法 / 曖昧性 / イップス |
Outline of Annual Research Achievements |
武道芸道の核心となる「無心」。本研究課題は心理学や身体科学で語られてきた自己超越的感情やマインドフルネス、フローといった概念を手掛かりとし、問いを深化・立体化することを目的としてきた。特にはその実践としての競技場面に着眼し、プレッシャーや競争といった状況下における無意識的/意識的な意思決定の観点から「無心」像に多角的に迫った。 ここで得られた成果は以下のとおりである。まず令和4年度は、令和3年に続いて認知と身体性の軸、これに加えて東洋思想の視点を包括し、自然界や競技場面において「無心」あるいはその対極に生じる「乱心」の規定要因やメカニズムその個人差についての実験・調査研究を重ねてきた。その主な結果として、1)令和3年度に開発した無心との関わりのある構成概念「曖昧性への多次元的態度尺度」を用いた実験・調査研究のデザインを、また東洋思想(「井筒俊彦の共時的構造化」「唯識思想」等)の視座をふまえつつ構築した「無心」モデルについての論考を改稿した。また1)ペアで交互にダーツ投げを行う課題を用いて、リスク選好、最適解、リスク回避の意思決定の模倣に対する競争の影響を検討、また2)他者の指上げ動画による2選択反応サイモン課題を用いた自動模倣傾向に対する競争の影響を検討し、その結果、1)競争下において意思決定の模倣を行わずに、ペア間のパフォーマンスの優劣に応じて機能的にリスク選好、最適解、リスク回避の意思決定をスイッチしながら課題を行うことでペアのパフォーマンスが向上すること、2)また競争下での自動模倣傾向の増減には個人差があるとともに、共感性尺度における自己指向的反応が強い人は非競争下において自動模倣が弱いが、競争下になると自動模倣が強くなること等を明らかにした。
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