2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K20864
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨永 恵子 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60256196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 均 京都大学, 医学研究科, 研究員 (60158813)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 概日リズム / マーモセット / 昼行性霊長類 / 体内時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常、哺乳類の生体リズムの解析には、行動量・体温・メラトニン分泌量などが用いられる。数カ月に及ぶ行動量リズムの解析は、もっぱら輪回しや自発行動(光電センサー、感熱センサー)を指標として行われてきた。脳活動記録である脳波ElectroEncephalogram(EEG)を生体リズムの解析に用いる試みは、自由行動下での大きなノイズや、EEG駆動のためのバッテリーの大きさの制限などが問題となり、これまでほとんど行われてこなかった。しかし、睡眠覚醒に伴う脳活動を脳波として直接記録することは、生体リズムと脳機能の関係を明らかにするうえできわめて重要である。本研究では、昼行性霊長類であるマーモセットの、睡眠覚醒に伴う脳波変動を長期間持続的に測定する方法を開発した。 実験には、3-5歳令の成熟コモン・マーモセットを用い、自由行動下におけるEEG、眼電図Electrooculogram (EOG)、活動量を測定・解析した。EEG、EOGの測定のために、それぞれEEG電極を頭頂骨に、EOG電極を片側の眼窩上部と側部に取り付けた。活動量の検出には、背中に装着可能な新たに開発したセンサー付き小型ワイヤレスアンプを用いた。行動は赤外線カメラによる暗視野観察監視モニターシステムにて録画した。 12時間明・12時間暗の明暗環境下では、環境の明暗周期に同調するEEG波形が観察された。明期にはα波、β波が、暗期にはθ波やδ波が優位であった。また、恒常明条件下でも、EEGは明瞭な概日リズムを示した。さらに、REM睡眠時にEOG波形を確認した。以上より、マーモセットの脳波は齧歯類にくらべて、ヒトとの共通性が極めて高く、生体リズムの研究に適した動物であることが明らかとなった。今後、ヒトのリズム障害の、遺伝子・分子レベルでの解析が可能なモデル動物になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、今回の研究において、小型昼行性霊長類であるマーモセットを用いた生体リズム測定系の確立をめざしている。今回、自由行動下でのマーモセットの脳波変動を、拘束することなく連続1週間測定できる機器を開発した。これにより、直接の脳活動と活動量の関係を調べることが可能になった。これは、従来の生体リズムの解析方法、すなわち行動量の変動から間接的に睡眠覚醒を推察し、病態を論じる、というやり方から一歩前進し、直接の脳機能変動から睡眠覚醒状態を議論できるようになったことを意味する。今回の、長期間の持続的な脳波測定は、睡眠時のみならず覚醒時の脳活動も記録し、各種環境刺激やストレス、変性疾患時の脳活動を捉える手法としても、利用価値が高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、照度や日長を調節できる恒常環境室にて飼育し、長期間の脳波リズムのモニターが可能となった。この系を、従来のウェアラブルセンサーの行動リズムや、体温センターを用いた体温リズムと組み合わせて利用することで、より詳細な霊長類の生体リズムの解析が可能となった。次年度には、ウイルスベクターを用いたマーモセット脳内生体リズム系を部位特異的に機能変化させる実験を予定しており、今年度には準備が整ったと考えている。さらに、この測定系を用いて、霊長類特異的な同調因子である社会性因子について検証し、霊長類概日リズムシステムの分子メカニズムを解明する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度のウイルスベクター作製および解析実験等、分子生物学的実験に使用するため。
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