2021 Fiscal Year Research-status Report
再現可能な心理学研究のためのクラウド研究基盤の開拓
Project/Area Number |
20K20870
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
国里 愛彦 専修大学, 人間科学部, 教授 (30613856)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 再現可能性 / オープンサイエンス / 事前登録 / データとコードの共有 / メタ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,心理学研究を(1)事前登録,(2)データ取得,(3) データ解析,(4)データ活用の4段階に分けた上で,それぞれに必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。 (1)事前登録:事前登録用のR Markdownテンプレートパッケージを作成し,事前登録について解説した論文を2編発表した(国里・土屋, 2022; 国里・遠山, 2021)。 (2)データ取得:JATOSでのデータ収集を前提とししたjsPsychテンプレートをGitHubで公開し,そのテンプレートを準備するR関数を作成した。なお,昨年度はjsPsych用R MarkdownパッケージとしてjsPsychRmdを作成したが,本年度にpsyinfrパッケージに統合した。また,電子ラボノートについても,昨年度に作成したeln4Rmdパッケージをpsyinfrパッケージに統合した。電子ラボノートについては,GitHubとの連携を強化し,少ないコードで作業が完結するように改善をした。 (3)データ解析:心理学者が活用しやすいDockerイメージの開発とメンテナンス(paper-r)に取り組み,データ解析から論文までを可能とするjpaRmdパッケージを作成した。昨年度は難しかった引用文献処理も可能となり,論文執筆ツールとしての利便性が向上した。jpaRmdについては,昨年度に引き続き,日本心理学会のチュートリアルワークショップにて普及活動につとめた。 (4)データ活用:オープンデータ化に必要な手順について整理し, 第43回生物学的精神医学会・第51回日本神経精神薬理学会,日本教育心理学会第63回総会,日本認知・行動療法学会第47回大会のシンポジウムにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,心理学研究に必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。過去2年での進捗状況は以下のとおりであり,おおむね順調に進展している。 (1)事前登録:AsPredicted用のR Markdownテンプレートパッケージを作成し,事前登録について解説した論文を2編執筆した。 (2)データ取得:昨年度にjsPsychを用いた実験課題をRで作成するjsPsychRmdパッケージを作成した。しかし,JATOSを用いたデータ収集をするのに合わせて再構成し,Rパッケージpsyinfrに統合した。昨年度に電子ラボノートのeLabFTWの日本語化とRMarkdownによる電子ラボノートのeln4Rmdを作成した。本年度は,eln4RmdとGitHubとの連携を強化し,ユーザーがごくわずかなコードを実行するのみで,GitHubとのやり取りと電子ラボノートの保管を可能にした。こちらも,Rパッケージpsyinfrに統合した。 (3) データ解析:心理学者が活用しやすいDockerイメージの開発とメンテナンス(paper-r)に取り組み,データ解析から論文までを可能とするjpaRmdパッケージを作成した。jpaRmdの開発は昨年度から行っているが,今年度にかけて,引用文献処理の性能が向上し,投稿可能な原稿出力ができるレベルになっている。今後も対象雑誌を広げるとともに,現在生じている不具合を減らすために開発を継続する。 (4)データ活用については,オープンデータ化に必要な手順について整理し,複数の学会のシンポジウムにて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,心理学研究を(1)事前登録,(2)データ取得,(3) データ解析,(4)データ活用の4段階に分けた上で,それぞれに必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。(1)~(3)については必要なRパッケージの開発が終了しており,以下を最終年度に取り組む予定になる。 (1)~(3)すでに開発したRパッケージ(jpaRmd, psyinfr)やDocker(paper-rなど)については,メンテナンスを行うととに,心理学者向けのワークショップや学会発表を予定している。特に,現状ではユーザーが使いやすいドキュメントの整備ができてないので,オンラインマテリアルなどを充実させる。また,これらのツールを使った追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを通して,再現可能なクラウド研究基盤の実現に向けた検討を行う。 (4)データ活用については,本年度にオープンデータの作成法について整理をして,学会などで発表を行った。しかし,オープンデータについては,技術的な問題だけでなく,倫理的な問題も存在することが議論となった。そこで,臨床領域も含む心理学研究におけるオープンデータ化について倫理的な側面も考慮した手順や留意点について整理する予定になる。最後に,既存のオープンデータに対してインタラクティブに効果量を統合するRもしくはShinyパッケージなどの開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
2021年度末に論文がアクセプトされ,年度内の予算執行が難しかったため,次年度に掲載料を払うために次年度使用額が生じた。使用計画としては,年度末に支払いができなかった掲載料を次年度に支払う予定である。
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Research Products
(12 results)