2021 Fiscal Year Research-status Report
Geometry from the viewpoint of quantization and duality
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20K20877
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 晃史 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10211848)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | クラスター代数 / 箙変異 / 分配級数 / 量子不変量 / ペンタゴン関係式 / 指標公式 / 量子ダイログ |
Outline of Annual Research Achievements |
箙 (quiver) とその変異 (mutation) は,クラスター代数とともに,可積分系・低次元トポロジー・表現論・代数幾何学・WKB 解析などさまざまな分野に共通して現れる構造として注目を集めている.特に,箙の変異列 (mutation sequence) とゲージ理論や3次元双曲多様体の関連が提唱され,その不変量を数学的に厳密に解析する手段の開発が必要となった.
私は寺嶋郁二氏(東北大学)との共同研究において、与えられた箙変異の列γ (quiver mutation loop = クラスター代数の exchange graph 上のループに相当)に対し、分配 q 級数 Z(γ) と呼ばれる母関数を定義した。これは、以下のような著しい性質を持つ。(1)Z(γ)は箙変異の列γの反転操作や巡回シフトのもとで不変であり、圏論的なモノドロミーの不変量と考えられる。(2) 箙変異の列γの変形に対し、量子ダイログと同様なペンタゴン関係式を満たす。(3) ADE型ディンキン図形やそのペアから自然に定義される分配 q 級数は、アフィン・リー環に附随するcoset 型共形場理論に現れるフェルミ型(準粒子型)指標公式に一致し、適当なqベキ補正のもとで Z(γ) は保型形式となる。(4) reddening sequence というクラスの箙変異列γに対し、分配級数は量子ダイログの積で表され、combinatorial Donaldson-Thomas invariant と一致する。
現在は分配級数の考え方を発展させ,3次元多様体の量子不変量を,理想単体分割のデータから直接的に構成する研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オンライン授業における資料作成や課題評価,大学院生に対するリモートでのセミナー指導などに思いの外多くの時間が取られ,研究に没頭するのがやや困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は分配級数の考え方を3次元多様体の量子不変量へ応用することを目指している。 箙変異の分配級数はあくまで q のべき級数として定義されるが,3次元単体の不変量を構成する場合には,多様体の向きを反転させる操作に応じて q と q^(-1) を入れ替える必要があり,q と q^(-1) を対等に扱えるような枠組みが必要だと考えられる。 そこで現在,以下の3つのアプローチを同時並行で研究している。すなわち,(1) 理想単体分割に branching と呼ばれる付加構造をのせて Hopf 代数の中心元を対応させる方法 (2) 結び目射影図の角領域に力学変数を付与して状態和を取る方法 (3)理想単体分割の面角に力学変数を付与して状態和を取る方法,である。 これらのアプローチにはそれぞれに長所と短所があり,たとえば,(1) では,すべての理想単体分割には必ずしも branching が存在するわけではなく,また Pachner 2-3 move のもとで,その状況が一般には変化してしまう。しかし,こうした特徴を洗い出して整理すれば,互いに補完し合う形で量子的な位相不変量を構成できるのではないかと,模索中である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会や研究集会への出張ができなくなったことが最大の要因である。先行きは不透明であるが,コロナの状況が改善した暁には,研究交流を深め,研究情報収集のため国内外の研究集会にも積極的に参加するつもりである。今年度が補助金の最終年度であるが,基金型であるメリットを活用して,来年以降に繰り越して有効利用して行きたい。
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