2021 Fiscal Year Research-status Report
Generalized Hodge conjecture and Lefschetz-Milnor theory for Hilbert schemes
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20K20879
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島田 伊知朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10235616)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | extremal 格子 / 計算機代数 / 自己準同型環 / ホッジ予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
1984年に Quebbemann が発表した extremal 格子の古典的な構成を一般化して,階数 64 の extremal 格子をランダムに構成する方法を定式化し,計算機に実装して多くの階数 64 の extremal 格子を明示的に作った.これらの格子に対し,ノルム 6 のベクトルを全て列挙しそれらの間の交叉行列の成分の個数を比較するという brute force を用いることで,これらの格子が互いに同型でないことを示した.この実験的研究により,Quebbemann 格子の同型類の個数が莫大なものとなることが示唆された.専門家の間でこの事実は予想されてはいた.本研究はこの予想に実験による定量的な証拠を提出するものである. またこの計算の副産物としてこれらの格子のうちの多くが自己同型群として自明なもの( 1 と-1のみからなるもの)しかもたないことを示した.一方,この格子をランダムに構成する時のパラメータを特別なものに取ることにより,自己同型群が位数16となる例も多数構成した.これらの結果は論文 A note on Quebbemann's extremal lattices of rank 64 (to appear in Journal de Theorie des Nombres de Bordeaux)にまとめた. 自明でない自己準同型環をもつアーベル多様体は(一般)ホッジ予想が非自明となる例を数多く提供する.このホッジ予想を考察するために,コンパクトリーマン面のヤコビアン多様体で自明でない自己準同型環をもつものを調べた.特に非可換群 G を自己同型群に持つリーマン面の,G の部分群による商として得られるリーマン面のヤコビアン多様体は興味深い自己準同型環を持つことが多い.G が二面体群の場合は詳しく調べられていたが,これを G がフロベニウス群の場合に拡張した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究の当初の目標は,非特異射影代数多様体 X が退化するときにそのヒルベルトスキームのある既約成分 H(X) がどのように退化するかを調べ, X 上の消失サイクルと H(X) 上の消失サイクルの関係から一般ホッジ予想にアプローチするというものであった.このアプローチのためには,ヒルベルトスキームのなかでも大きな次元を持つ部分多様体をパラメータづけする既約成分(できれば問題の一般ホッジ予想に現れる Hodge colevel と同じ次元を持つ部分多様体の族に対する既約成分)を詳しく調べる必要がある.また,非特異射影代数多様体 X の変形と,部分多様体の X の中での変形を同時に扱うための理論的な枠組みを必要とする.しかしながら,この目的のためのヒルベルトスキームの一般論についてはいまのところ進展がない.また,H(X) 上の消失サイクルから X 上の消失サイクルへの非自明な対応が得られるためにはどのような部分多様体の族をとれば良いのかということについての,具体例による実験もあまりできていない.多変数の多項式の計算においてはナイーヴな方法では係数の爆発的増加により計算量がすぐに計算機の能力を超えてしまうために,正標数への還元などの工夫を重ねなくてはいけないが,そのために必要な各種の計算ツールの構築に手間取っている.グラスマニアン多様体上の完全交叉を材料として実験を行う予定であったが,大きな自己準同型環をもつヤコビアンについての研究に時間を取られまだ手が付けられていない.
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Strategy for Future Research Activity |
Quebbemann 格子について体積公式を用いた研究を行い,その同型類の個数についてより精密な結果を得ることをめざす.Quebbemann 格子はある性質をもつ ternary 符号から構成される.この ternary 符号の自己同型群を詳しく調べ,符号についての体積公式を証明する.ここから格子について体積公式を求める.さらに Quebbemann 格子の構成を一般化して,いろいろな次元における高い球面充填密度を与える格子の構成を試みる. 非特異射影代数多様体の変形と, この非特異射影代数多様体 X の部分多様体の X の中での変形を同時に扱うための理論的な枠組みを構築する.多変数の多項式の計算に関して必要な計算ツールの整備をおこない,グラスマニアン多様体上の完全交叉を題材として,これらの完全交叉上の部分多様体の族に関して,実験的研究を始める.部分多様体のクラスとしてシューベルトサイクルを考えることから始める.射影空間において古典的に示された,Clemens-Griffiths の3次元3次超曲面上の直線の族についての結果や Tyurin による2次超曲面の完全交叉についての結果をグラスマニアン多様体上の完全交叉に拡張する. 大きな自己準同型環をもつヤコビアン多様体についての論文をまとめる.フロベニウス群の有限次元表現に関する計算ツールの整備をおこない,コンパクトリーマン面の自己準同型環から得られるヤコビアン多様体上の非自明な代数的サイクルの研究を始める.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の流行により,研究情報収集のための出張が国内・国外とも不可能となってしまったため,旅費として使用する予定であった金額が,ほぼ全額次年度使用額として残ることになった.ドイツからの若手研究者,およびハノイからの研究者を日本に招聘予定であったが,その予定を立てることすらできなかった.また,国内の研究集会への出席や情報交換のための出張も一切行わなかった. 2022年度はパンデミックが収束し,これらの研究交流活動を再開できるようになることを期待している. さらに並行計算が可能なマルチプロセッサ計算機を新たに購入し,計算機実験を早くすすめる.(現在使用している マルチプロセッサ計算機は 2016 年に購入したものである.)
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Research Products
(8 results)