2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of Ultra-High Field Properties in Itinerant Electron Systems by using High-Speed Magnetoresistance Measurement
Project/Area Number |
20K20892
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小濱 芳允 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90447524)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 超強磁場 / 磁気抵抗 / 超伝導 / トポロジカル物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究『高速抵抗測定でプローブする遍歴電子系の超強磁場物性』は、銅系超伝導体で期待されるFFLO相やディラック・ワイル電子系の超強磁場物性等の探索的研究を行う。これにより、100テスラ以上の超強磁場領域でおこる新奇現象を解明もしくは発見し、『超強磁場領域での遍歴電子系科学』の基盤となることを目指している。また本研究の波及効果は遍歴電子系の物性研究に留まらない。例えば量子スピン系の分野では、『フィルム温度計の応用による超強磁場領域の磁気熱量効果測定』が考えられ、これは超強磁場領域で起こる磁気相転移の検出に用いることができる。 この挑戦的な本課題を進めるためには、技術的な発展および開発が必須である。このため本研究では『直接的磁気抵抗測定手法』および『RFインピーダンス測定手法』の高精度化を進めている。また様々な温度域での探索的研究を行うために、クライオスタットの整備も必須である。本研究の枠組み内での測定対象物質は、超伝導体やトポロジカル電子系化合物であるが、これらのサンプル群では、薄膜サンプルであればほぼ問題なく測定ができている。しかしバルクサンプルでは渦電流による発熱が問題となることが明らかになっている。このため、バルクより小さなメゾスコピック系のサンプルを調整するために、FIBを軸とした微細加工技術の錬磨も進めなければならない。 本申請では、以上のような幾つかの技術的開発を並列に進めていく。既にシングルターンコイルという超強磁場発生装置を使い、200テスラまでの研究を進めているが、将来的には電磁濃縮装置を用いて、1000テスラ領域での磁気抵抗測定を成功させたい。この準備段階として、幾つかのサンプルについて200テスラまでの実験を幾つかのサンプルで遂行させ、技術的な向上と超強磁場領域での研究の土台作りを進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は提案者により開発された『直接的磁気抵抗測定手法』および『RFインピーダンス測定手法』を改良した。そしてシングルターンコイルという超強磁場発生装置で200テスラまでの研究を進めた。これにより、鉄系超伝導体とグラファイトを中心に3件の研究を成功させ、本申請が達成可能であることを実験的に確認できた。これらの結果は、装置開発手法の論文と合わせて4件が論文調整中であり、おおむね順調に進展しているといえよう。一方、銅系超伝導体における磁気抵抗測定は、試料をFIB加工するところで失敗している。これはサンプルが非常に割れやすいためであり、そもそも対象サンプルを微細加工するのにFIB技術は向いていないかもしれない。微細加工サンプルの作製は職人技であり、更なる経験を積むことで、技術的な解決を狙っていく。 また開発した測定手法を応用することで、多岐に渡るサンプルで強磁場領域での物性測定が進んだ。例えばグラファイトの強磁場相の研究では、相転移のユニバーサルクラスを決定できた。この研究はPhys. Rev. Lett.のEditor's suggestionに選ばれた。他にも電気抵抗測定技術を基本とする測定手法は、幾つかの伝導系サンプルにおける量子振動に寄与した。例えば高温超伝導体における成果は、Science誌に発表された。量子振動測定技術を応用した研究は広く進んでおり、将来的に更なる成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、グラファイトにおける電磁濃縮法を用いた磁気抵抗測定を計画している。このために、特殊クライオスタットの開発、電気抵抗測定手法の更なる改良が進んでおり、2021年度前半に500Tまでの実験を行える。この実験によりグラファイトについての研究は終了するが、新たにビスマスなどの代表的な半金属についての研究を進める予定である。既に幾つかの実験データがたまっており、これらの解析および補完的な実験を進めることで、論文発表を目指す。 銅酸化物超伝導体における磁気抵抗測定では、FIB加工による試料にクラックが入ることが問題であった。2021年度はFIB加工を何回か行い、加工におけるパラメータを詳細に変化させることで、クラックが入らない条件を探し出す。それでも試料のクラックが問題となる場合は、ウィスカー単結晶が入手できる別の銅系高温超伝導体で研究を進める。ウィスカー単結晶は非常に小さいため、そもそも渦電流の効果が少なくFIB加工が必要ない。この単結晶サンプルでの研究により、銅酸化物超伝導体の強磁場相についての研究が完了すると思われる。 また既に磁気熱量効果のテスト測定を105テスラまで行っており、この手法が超強磁場領域で測定可能であることが判っている。磁場中でのトルクへの対応など、幾つかの課題が存在するものの、サンプル固定法の変更により、これらを解決したい。そして、超強磁場領域における磁気熱量効果測定の確立も目指す。 これらの研究細目を遂行することで、『超強磁場領域での遍歴電子系科学』の土台を築いていく。
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Research Products
(42 results)
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[Presentation] カリウム蒸着で希薄ドープ化した綺麗なCuO2面の電子状態:レーザー角度分解光電子分光による研究2020
Author(s)
黒川輝風, 磯野隼佑, 小濱芳允, 國定聡, 酒井志朗, 関根遼太郎, 大久保卓, 鶴川智一, 黒田健太, 辛埴, 遠山貴己, 常盤和靖, 近藤猛
Organizer
日本物理学会2020年秋季大会
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