2020 Fiscal Year Research-status Report
レーザー駆動マイクロチューブを使ったメガテスラ級極超高磁場の生成
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20K20910
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 匡且 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (80192772)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロチューブ爆縮 / メガテスラ磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
G. Mourou(ノーベル物理学賞 2018)が発明 したレーザー光増幅法によって、超高強度 場に絡む様々な基礎実験が可能となってき た。しかし、現代物理(量子電磁力学:QED)の枠を超えて新たな未踏領域へと歩 を進めるには、電場の値をシュウィンガー 極限と呼ばれる閾値にまで増大させること が必要とされる。然るに、その実現に向け 殆んどの研究者が想定する「レーザービー ム同士の対向照射(即ち、光子と光子の衝 突)」というアプローチを採用すると、レーザー照射 強度において未だ6~7桁足りないのが実情である。 これに対し、本申請者は 2018 年春「マイクロバブル 爆縮による超高電場の生成」という新たな物理原理 を発表した[6]。同原理は「プラズマを媒介すること でレーザーの持つ電場を空間・時間双方で圧縮する」 という意味において画期的な発案となった。さらに 2019 年春、同原理に基づいて「原理的に現在のレー ザー技術でシュウィンガー極限近傍の超高強電場を 実現できる」ことを理論モデルと3次元粒子シミュ レーションを使って明らかにした。 2019 年夏、本申請者は、マイクロバブル爆縮におけ る基本幾何形状である球を円筒にし、種磁場を加え ることで、極超高電場ではなく極超高磁場を得られ るのではないかという発想に至った。同発想に基づ く新原理(図4)の理論的基礎研究として令和2年 度の科研費・挑戦的萌芽研究が採択された(2ケ 年)。2020 年 10 月、同原理の正当性を粒子シミュレ ーションによって明らかにした結果を原著論文とし て出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年9月にNature系ジャーナルの一つ「Scientific Reports Vol.10, (2020) 16653」に、本科研費の研究課題であるメガテスラ磁場生成に関する論文が発表されるや、わずか2ヶ月の間に5000件のダウンロードを記録し、2020年度の物理領域のトップ百の論文として選ばれ、その中でもトップ7位であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場強度の増大を目的としてレーザーを含む様々な研究が行われてきたが上限が1~2キロ テスラに止まっている。一方、本研究で考える物理原理は本申請者独自の発案であり他研究機関ではこれまで一切論じられていない。その意味で、本研究は「独創的なコンセ プトを以って人類未踏の極限物理の開拓と解明に向けた先駆的挑戦」と位置付けられる。 上記の「理由」でも述べたように、本研究の成果はすでに世界的な知名度を得るに至っている。今後、実験を目指して、理論・シミュレーションによりマイクロチューブ爆縮の物理を解明しそのスケーリングを確立してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響のため、本来予定されていた、国際会議での発表が取りやめになったため。
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Research Products
(5 results)