2020 Fiscal Year Research-status Report
集積化MEMS技術を応用した極微小大気圧熱プラズマジェット生成技術の研究
Project/Area Number |
20K20911
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
東 清一郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (30363047)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では集積化MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用してマイクロメートルサイズの大気圧熱プラズマジェット(Thermal Plasma Jet : TPJ)発生技術に関する基礎研究とともに、これを集積化したマルチノズルTPJ生成の基盤技術確立を目的とする。 2020年度はシリコン(100)ウエハの異方性エッチングを利用したピラミッド状の突起および溝構造(それぞれ陰極および陽極の基本構造)形成に焦点を当て、微小構造作製に取り組んだ。SiO2ハードマスクとテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を用いて様々なハードマスク形状およびウエットエッチング条件を試行した結果、150μm角のSiO2パターンでTMAH15%溶液に20%IPAを添加して285分間エッチングを行うことで、スムースな側壁をもつ高さ135μmの理想的なピラミッド構造を作製することに成功した。一方、陰極構造の凹型ピラミッド構造については、150μm角の開口部を空けたSiO2ハードマスクを用いてTMAH20%溶液で240分間エッチングを行うことで深さ188μmの良好な形状の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリコン(100)ウエハを洗浄後、パイロジェニック酸化により500nmの酸化膜を形成し、フォトリソグラフィとHFエッチングによりSiO2をパターン化したものをハードマスクとして下部のシリコンウエハエッチングすることにより、凸型ピラミッド構造(陰極)および凹型ピラミッド構造(陽極)の形成に取組んだ。 まずTMAH 濃度(5~25%)に着目し、エッチング形状の調査をおこなった。濃度が低い場合は(100)面 にテクスチャー(マイクロピラミッド構造)が数多く見られ、ピラミッド側壁においては段差が生じスムースな表面が得られなかった。一方、TMAH 濃度が高い場合は(100)面にテクスチャーが見られず、ピラミッド側面の段差や形状崩れもほとんど見られなかった。また、TMAH 濃度が高いほど (100)面のマイクロピラミッドの数が少なくなることがわかった。一方、TMAH濃度が高い場合、理想的な(111)側壁に加えて、稜線ぶから(221)面のエッチングが進展し、良好なピラミッド形状から次第に六角形の凸形状へと変化することが分かった。この問題を回避するために、イソプロピルアルコール(IPA)添加を導入し、スムースな側壁面および良好なピラミッド形状の両立を図った。様々なハードマスク形状およびウエットエッチング条件を試行した結果、150μm角のSiO2パターンでTMAH15%溶液に20%IPAを添加して285分間エッチングを行うことで、スムースな側壁をもつ良好なピラミッド形状を作製することに成功した。 一方、陰極構造の凹型ピラミッド構造については、150μm角の開口部を空けたSiO2ハードマスクを用いてTMAH20%溶液で240分間エッチングを行うことで良好な形状の作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
陰極および陽極の基本形状作製については概ね目途が立ったため、今後はこれらを電極として用いるための技術開発に軸足を移す。具体的には陰極の凸型ピラミッド構造の表面を熱酸化した後にタングステン(W)薄膜を形成、エッチングで電極形状に成形する。凹型ピラミッド構造の陽極については深堀エッチングを用いて中心部に噴出孔を形成し、その後湿式メッキにより表面を銅被覆する。 その後は放電実験を実施する。まず陰極のWを通電加熱した状態で対向電極(平板)との間にDC電圧を印可して、Ar雰囲気中でアーク放電をおこなう。この基本動作が確認できた後には、陽極構造とを対向させて放電実験およびプラズマジェットの発生を確認する。以上の実験により得られた放電条件に基づき、集積化に必要な回路設計の基本的な仕様を決定する。
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Causes of Carryover |
R2年度備品としてDC電源の購入を予定していた。これまでの実験で、微小電極構造を用いた大気圧プラズマ発生に適した放電はこれまで我々が取り組んできた大電力放電とはかなり異なる条件となる可能性が次第に明らかになった。そこで、十分な基礎データを揃えてから電源の選定をするべきであると考え、この費用を翌年度に持ち越すのが適当であると判断したため。 次年度はこの備品費に加え、放電条件を探索するための観察窓付き専用チャンバを自作することを計画しており、繰越額をこれらの制作費に充当する計画である。
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