2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on the tunneling phenomena of plasma bullets through a dielectric plate and its applications
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20K20913
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
白藤 立 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10235757)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | プラズマ弾丸 / 大気圧プラズマ / トンネリング / 骨再生スキャフォールド / 親水化 / 大容量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,誘電体板越しのプラズマ弾丸伝播のメカニズムを理解するための研究を行った.具体的には,弾丸着弾時に蓄積された電荷による局所電場が,誘電体の裏面側に新たなプラズマ弾丸を生成するというモデルを立て,その妥当性を基礎実験により検証した.まず,異なる厚みの誘電体にヘリウムガスを用いた同一条件の大気圧プラズマジェットを照射し,プラズマ弾丸の伝播特性を調べた.その結果,誘電体の厚みが薄いほど,誘電体板越しのプラズマ弾丸伝播が顕著になった.この結果は,誘電体板のキャパシタンスが大きくなるほど,誘電体の厚み方向に分割される電圧が小さくなり,誘電体の裏面側に形成される電場の強度が強くなるというメカニズムで説明される.このメカニズムの妥当性は,誘電体の片面に電荷蓄積が生じた際に裏面側で発生する電場強度を計算機シミュレーションすることによっても確認された.同様の視点で,異なる誘電率の誘電体を用いた場合のキャパシタンスの違いが,ポリ乳酸の3Dプリントで得られる連続多孔体(骨再生スキャフォールド)内部の親水化度(透水性)に与える影響を調査した.その結果,薄くても誘電率が大きい(キャパシタンスが大きい)方が,スキャフォールド内部が顕著に親水化されることを明らかにした.以上の実験結果は,誘電体の片面に局所的なパルス電場を印加すれば,ヘリウムガスを大量に消費する大気圧プラズマジェットを片面に照射しなくても,反対側の面からプラズマ弾丸を射出できる可能性があることを示唆している.本研究では,それが可能であることも実験的に検証した.また,この現象を応用することで,ポリ乳酸の3Dプリントで形成される骨再生スキャフォールド内部を親水化できることも確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は,誘電体板越しのプラズマ弾丸伝播のメカニズムとして,誘電体へのプラズマ弾丸着弾時の蓄積電荷による局所電場が原因となって新たなプラズマ弾丸が誘電体の裏面に生成されるというメカニズムを申請時に推論していた.本年度の一連の研究により,その推論を裏付ける基礎的な実験結果や計算結果が得られた.また,このメカニズムに基づき,誘電体の裏面側へのプラズマ弾丸射出方法として,誘電体の片面に高電圧パルスを印加するだけ,というより簡便な方法を発案するに至った.また,当該発案手法により,確かに誘電体の裏面からプラズマ弾丸を射出できることを実験的に確認することにも成功した.さらに,当該手法を骨再生スキャフォールド内部の親水化に応用できるリアクターを製作し,スキャフォールドの親水化実験を行ったところ,親水化が可能であることも確認できた.以上の成果は,学術的にも実用的にも,当初の計画通りに,おおむね順調に研究が進展したことを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究により,誘電体板越しのプラズマ弾丸伝播のメカニズムが概ね理解され,その理解の妥当性も実験的に検証された.そので,今後の研究では,骨再生スキャフォールド内部の親水化をより効率よく行うこと,より難度の高い骨再生スキャフォールド(空隙が狭い,形状が複雑など)の親水化のための方策を探索する.また,従来の大気圧プラズマが狭ギャップでしか生成されないのに対し,本研究で得られる大気圧プラズマは,実質的には比較的体積の大きいプラズマとなる.このことを利用し,新たな処理対象物として,多孔質誘電体と同様の構造を持つ顆粒のプラズマ処理などへの可能性を探索する.なお,前年度の研究により,高価なヘリウムガスのジェットを用いた大気圧プラズマジェットを誘電体に照射する代わりに,電極を張り付ければよいだけとなったが,裏面側には依然として高価なヘリウムガスが高純度で存在することが必要である.そこで,将来の産業応用時にネックとなる効果なヘリウムガスの大量使用を回避する策として,ヘリウムガス以外のガス(例えば,アルゴンガスなど)を用いて同様の処理が可能であるかどうかを探索する.
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Research Products
(9 results)