2020 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノレス二重ベータ崩壊探索用ナノ粒子添加液体シンチレータの開発
Project/Area Number |
20K20917
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 圭介 東北大学, 工学研究科, 教授 (60231859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越水 正典 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40374962)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / ニュートリノ / 液体シンチレータ / 超臨界水熱合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、100Moや96Zrを主成分とする酸化物ナノ粒子を液体シンチレータに大量に分散させる技術を開発することを目的とした。超臨界水熱合成法により、表面に有機分子を修飾することにより、液体シンチレータの主成分であるトルエンなどの有機溶媒に対して分散性の高いナノ粒子を合成した。合成開始溶液中での金属元素濃度や修飾有機分子の種類、あるいは合成温度・時間・圧力を通じて、ナノ粒子の分散性を最適化した。合成したナノ粒子を液体シンチレータへと分散し、そのシンチレーション特性を解析した。 今年度には、液体シンチレータを構成する溶媒であるトルエンなどの有機溶媒に分散するZr酸化物ナノ粒子を合成した。有機溶剤への分散性を高めるため、ナノ粒子の表面を有機分子で修飾し、疎水的な表面状態を得た。異なる温度での超臨界あるいは亜臨界水熱合成により、また異なる修飾分子を用い、表面修飾ZrO2ナノ粒子を得た。特に、異なる長さを有する修飾分子の利用により、トルエン中で1 wt%程度での安定な分散状態の実現に成功した。 乾燥させたナノ粒子の分析により、ナノ粒子表面には1平方ナノメートルあたり2分子程度の修飾がされており、まだ向上の余地はあるものの、比較的良好な表面修飾状態の実現に成功した。また、ナノ粒子のサイズも10 nm以下のものであり、本研究の目的に適したサイズであるといえる。 さらに、今年度には、得られた分散液を利用した液体シンチレータの作製にも成功した。DPOやPOPOPという蛍光体分子の添加により液体シンチレータを構成し、5000光子/MeV以上の発光量の実現に成功した。達成した発光量と添加Zr濃度を考慮すると錯体などを溶解した従来の液体シンチレータと比較して圧倒的に高い性能の実現に成功したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、液体シンチレータの作製は2年度目に行う予定であったが、当初の計画以上にナノ粒子分散液の合成の進捗が早かったため、液体シンチレータの作製にも取り掛かった。その結果、従来の錯体添加液体シンチレータよりも顕著に高いシンチレーション収率を実現できたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年度目には、前年度に開発されたナノ粒子分散液を用い、ナノ粒子分散液体シンチレータを開発する。液体シンチレータでは、通常用いられる蛍光体分子(DPOやPOPOPなど)を用いる。開発した液体シンチレータについて、シンチレーションの生じる波長における透明性を評価し、また、発光収率やエネルギー分解能を求める。特に、ナノ粒子添加量の発光量への影響は、ナノ粒子そのものの特性と密接に関連する。ナノ粒子添加に伴うシンチレータの特性変化の結果をフィードバックし、より望ましい特性を有するナノ粒子を合成する。
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