2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of solid xenon TPC for a polarized direct dark matter search
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20K20919
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 液体キセノン / 固体キセノン / 低温検出器 / 核偏極実験 / アクシオン / 検出機開発 / 非加速器素粒子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、石英容器を液体キセノンTPC内部に内包した二重型液体キセノン2相式TPCの設計を、密閉型キセノンTPC検出器との共通作業として進め、0.1LプロトタイプTPCとして完成させた。同時に昨年まで整備を進めてきた冷凍系、真空系の中に組み込みキセノンガス循環まで確立した。さらに石英容器内部・外部の独立液化、循環のための概念設計を進めるとともに、固体キセノンTPC検出器として使用する場合の構成について検討を進めた。 並行して、液体キセノンの純化モニタープロトタイプを転用したキセノン固化試験を行った。純化モニターは二極管構造をした液体キセノンチェンバーであり、紫外光照射した陰極から放出される光電子を外部電場でドリフトし陽極電流値を測定するものである。液化ポイントである1気圧-100度でまず液化を行い、さらにそれおを超えて冷却を行ったが、液相の固化は確認できず、陽極電流の不安的になったため固体化を断念した。従来の液体キセノンチェンバーのように、上部コールドフィンガーのみで冷却を行っていたため、コールドフィンガー周辺が先に凍結し、液相の冷却に至らなかったためと考えられる。先行研究のように、液相をためた石英容器自身を液体窒素等で冷却し下から固化させる手法が必要と結論し、石英容器TPCの見直しを行なっている。 偏極キセノンを用いた暗黒物質探索や新物理探索を検討するため、偏極キセノンを用いて中性子スピン実験を行なっている名大中性子グループとの定期ブレインストーミングミーティングを立ち上げ、2021年度は2回の打ち合わせを行った。互いの研究紹介や偏極ガスキセノンを用いた非常に軽いアクシオン探索(NASDUCK実験)の紹介・検討が行われた。本ミーティングは、名大KMIでの「分野横断セミナー」の枠組みの中で2022年度以降も継続予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度中には固体キセノンの安定した製法の確立を行い、TPCとしての動作を確認した上で、偏極キセノンへの道筋をつける予定であったが、まだ固化の手法が確立されていない。一方、偏極キセノンの製法については、既に確立したハイパーポラリゼーションの手法があるが、高温のルビジウム蒸気と混合する必要があり、気相から直接固化の手法により偏極固体キセノンを作成可能と考えられるが、大量のキセノンの液化、固化の実現は困難であると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
上部冷凍機のコールドフィンガーによって液体キセノンを導入した石英容器の外側に液体窒素を導入し、ヒーターで温度勾配をコントロールしながら固化させる先行研究の手法をまず導入し、安定した液体キセノン結晶生成手法をまず確立する。目視が可能なようにTPCを目視するビューボートも導入する。 これと並行して、気相キセノンを冷却した石英板上に直接固化(氷結)させる手法をためのセットアップ制作を行う。可能であれば、ハイパーポラリゼーションにより偏極ガスキセノン生成の経験を持つ中性子グループと協力し、世界初の偏極固相キセノン検出器の作成に挑戦する。
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Causes of Carryover |
2020-2021年度はコロナ禍によりリモートワーク中心で、キセノン固化実験を行う時間的・人員的余裕がなかった。2021年秋以降、コロナワクチンも行き渡り、2022年度からはほぼ通常通りの実験体制が組めると期待している。
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