2020 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study of the unknown component of the vacuum energy
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20K20921
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嶋 達志 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (10222035)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 真空のゼロ点エネルギー / 自己エネルギー / ダークエネルギー / 光半導体 / カドミウムテルル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、量子場の真空が持つゼロ点エネルギーのうち、ダークエネルギーとの密接な関連が示唆される“自己エネルギー項”について、直接検出を試みることを目的とする。自己エネルギー項は、空間のスケールなどの幾何学的条件には依存しないが、空間の境界を成す極板のカットオフ周波数に依存するため、それを人為的に操作した際の変化を検出できる可能性がある。 2020年度は、金属や半導体などの電気伝導性を持つ材料が示す表皮効果がカットオフの役割を果たすことを理論的に証明した。このことにより、それに基づいて、電気伝導率を非接触で制御できる材料として光半導体に着目し、光半導体の一種であるCdTeの電気伝導率を制御光の照度の関数として系統的に測定した。その結果、白色LED光の照度 0~200 W/m^2 の間で電気伝導率が1.6×10^-6 [S/m]から 7.8×10^-4 [S/m]と、約500倍の変化を示すことがわかった。CdTe半導体の光伝導特性は従来ほとんど知られておらず、この結果は貴重なデータである。 ただしこの測定から、CdTeの電気伝導率が最大でも10^-3 [S/m]であるために十分大きな表皮効果を得ることが難しいことも判明した。そこで現在、CdTeよりもさらに大きい電気伝導率を持つことが期待されるCdS半導体について同様の調査を進めている。 またそれらと並行して、自己エネルギー項が極板に及ぼす圧力の大きさについて見積りを行い、その検出に十分な感度が得られる検出装置の設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内における新型コロナウィルス感染症の流行により本研究課題の採択が7月末となり、そのため研究の開始時期が大幅に遅れた。また、量子場の境界条件を設定する極板の光半導体材料についても、同じく新型コロナウィルス感染症の影響によりメーカー側の製造および流通スケジュールに遅れが発生し、そのため研究の進行に影響が生じた。そこで、2020年度は本研究全体において重要な鍵となる光半導体の特性の調査に集中し、上記の影響を最小限にとどめた。以上の経緯により、当初の研究計画からは遅れているものの、2021年度中にはその遅れをほぼ取り戻せるものと予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中に真空の自己エネルギー検出のための実験装置を製作する。自己エネルギー項と並ぶ真空のゼロ点エネルギーとして遅延ポテンシャル項があるが、その物理的効果は所謂カシミール力として知られており、1997年にS.K.Lamoreauxによって実験的に確認されている。そこで、本装置を用いて既知のカシミール力の測定を実施し、装置が正しく動作することを確認する。対向する2枚の平行平面極板の間に発生する微小な引力を、極板間距離の関数として測定し、理論的に予測される値との比較から装置の測定精度を検証する。 次に、上記の装置の対向する極板の一方の裏面に光半導体の薄板を付加し、外側から制御光を照射しカットオフ周波数を変化させ、極板に発生する圧力の変化を観測する。これによって極板の外側の領域に生じていると予想される真空の自己エネルギー成分からの寄与を検出する。2021年度第4四半期から2022年度第1四半期にかけて測定試験を実施し、不具合または検出感度不足が見いだされれば、その要因を突き止め、対処する。 2022年度第2四半期に本測定を開始し、極板に生じる圧力をカットオフ周波数の関数として系統的に測定する。その結果を理論から予想される値と比較し、自己エネルギー項の性質を明らかにする。
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Causes of Carryover |
国内における新型コロナウィルス感染症の流行により本研究課題の採択が7月末となり、そのため研究の開始時期が大幅に遅れた。また、量子場の境界条件を設定する極板の光半導体材料についても、同じく新型コロナウィルス感染症の影響によりメーカー側の製造および流通スケジュールに遅れが発生し、そのため研究の進行に影響が生じた。そこで、2020年度は本研究全体において重要な鍵となる光半導体の特性の調査に集中し、上記の影響を最小限にとどめた。以上の経緯により、当初2020年度中に製作する予定であった真空のゼロ点エネルギー測定装置本体の製作に至らず、次年度に製作する計画とした。このため、測定装置本体の部品購入のための経費を次年度使用額とした。装置本体の製作は2021年度中に行うが、2022年度に予定している本測定には支障を来さないものと見込んでいる。
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Research Products
(2 results)