Experimental study of the unknown component of the vacuum energy

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K20921
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 嶋 達志 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (10222035)
• Project Period (FY): 2020-07-30 – 2023-03-31
• Keywords: 真空のゼロ点エネルギー / 自己エネルギー / ダークエネルギー / 光半導体

Outline of Annual Research Achievements

量子場の真空が持つゼロ点エネルギーのうち、“自己エネルギー項”は距離に依らない斥力を生み出すため、ダークエネルギーとの密接な関連が示唆されている。自己エネルギー項は、空間のスケールなどの幾何学的条件には依存しないが、空間の境界を成す極板のカットオフ周波数に依存するため、それを人為的に操作した際の変化を検出できる可能性がある。本研究は光半導体を材料とする極板にさまざまな強度の外部光を照射することで、その電気伝導度を非接触で制御し、それに伴う自己エネルギー項の変化を確認することを目的とする。
実際の測定では、自己エネルギーが分布する空間の境界を光半導体製の固定電極および金属製の可動電極によって構成する。外部光の強度を変化させた場合、自己エネルギー密度が変化し、電極に対して圧力変化が生じる。それによる可動電極の微小な変位を極板間の静電容量の変化として検出する。2021年度は、光半導体材料の候補としてヒ化ガリウム（GaAs）に着目し、その物理特性データに基づいて実際の測定実験における適切な外部光の波長と強度を決定した。また、基極板間に入力された準高周波信号に対する位相の変化をディジタル位相検波によって分析することにより、静電容量の変化を良好なS/N比で検出可能であることを確認した。現在、本測定用の実験装置の組み立て・調整を進めており、真空のゼロ点エネルギーが示す既知の現象であるカシミール効果の確認を行った後、自己エネルギー項の測定を行う。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

国内における新型コロナウィルス感染症の流行により本研究課題の採択が2020年7月末となり、そのため研究の開始時期が大幅に遅れた。また、量子場の境界条件を設定する極板の光半導体材料についても、同じく新型コロナウィルス感染症の影響によりメーカー側の製造および流通スケジュールに遅れが発生し、そのため研究の進行に影響が生じた。これらの遅延は研究計画の最適化によって2021年度中にある程度取り戻せているが、申請当初の研究計画からは依然として若干の遅れが残っている。

Strategy for Future Research Activity

本測定用の実験装置については当初2021年度内の完成を予定していたが、2022年度上半期にずれ込む予定である。しかし、もっとも重要な課題のひとつであった極板間静電容量の測定についてはディジタル位相検波器の採用により目処が立ち、2022年度下半期に本測定を開始できる見込みである。実験装置の動作確認を兼ねて既知の現象であるカシミール効果の確認を行い、それに続いて自己エネルギー項の観測実験を実施する。

Causes of Carryover

実験装置容器の排気用真空ポンプ、および高真空対応の光学ミラーについて、新型コロナウィルス感染症の影響によりメーカー側の製造および流通スケジュールに遅れが発生し、研究全体の物品調達スケジュールにも遅れが生じた。これらの物品については2022年7月までに調達可能の見込みであり、2022年度上半期中に実験装置の完成、同下半期中に本測定を予定している。