2021 Fiscal Year Annual Research Report
電波望遠鏡用テラヘルツ帯検出器の高感度化に向けた超低損失立体伝送路の実現
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20K20930
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 拓 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (90570359)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ニオブ材 / 超伝導導波管 / テラヘルツ波 / ミリ波・サブミリ波 / 電波望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、テラヘルツ波の基礎技術課題の一つである「伝送」の技術開拓に着目し、電波望遠鏡用受信機に使用される導波管立体回路での伝送損失を極限まで低減させる新しいアイデアの実証実験を行うことを目的としている。 今年度はまず、昨年度製作した純ニオブ材のテストブロックをヘリウム冷凍機によって冷却し、その表面温度の測定を行った。ニオブの熱伝導率は銅やアルミに比べて悪く、冷却に難があるのではないかと懸念していたが、約4.2 Kまで冷却できることが確認できた。この値は、ニオブの超伝導転移温度に比べて充分低い。 次に、電気的な伝送特性を評価するための導波管を設計・製作した。昨年度の試験加工の結果に基づき、W-band(100 GHz帯)で長さ20 mmの直線導波管に、1.27 x 2.54 x 1.63 mmのボックス構造を微小なアイリス窓を介して接続した共振器とし、ニオブのほか、一般的に用いられるテルル銅(+金メッキ)とアルミ合金でも同じものを製作した。 製作した3つの共振器は、まず情報通信研究機構にあるベクトルネットワークアナライザを用いて、常温下で伝送特性を測定した。この結果は、事前に行った電磁界解析の結果と非常によく一致しており、加工や評価に問題が無いことが確認できた。次に、名古屋大学でこれらを極低温に冷却したときの伝送特性を測定した。この結果を常温時の結果と比べたところ、共振特性のQ値(共振の中心周波数と強度が半分に低下するレベルでの周波数幅の比)が冷却時には大きくなっていることが確認できた。 テルル銅とアルミ合金は、文献値から予測されるQ値と概ね一致していたが、ニオブは先行研究で示されている計算値に対して、25倍以上大きな値が得られた。このことは、超伝導状態のニオブの伝送損失が理論予測に比べて非常に小さいことを示しており、伝送損失の低減に超伝導導波管が有効であることを示唆している。
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Research Products
(4 results)