2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20939
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | スペクトル比 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球内部のQ値は地球の自由振動や地震波形の解析などから推定されている。実験や理論的考察から鉱物の結晶粒界すべりや格子欠陥の転位によるエネルギー散逸など複数のメカニズムにより減衰が生じることが指摘されているが、現状では減衰の振幅依存はないと仮定して解析が行われている。前年度までの解析により、2003年に宮城県沖で発生したスラブ内地震(M7.1)の余震のスペクトル比解析から減衰の振幅依存が示唆される結果が得られていたが、そこでは地震の規模(マグニチュード)をパラメータとして解析していた。しかしながら、観測される減衰の振幅依存を高精度で抽出するためには、地震の規模ではなく、観測振幅の大きさそのもので評価する必要がある。そこで今年度は観測振幅を用いた解析を再度行った。その結果、昨年度よりもより明瞭な減衰の振幅依存が観測された。結果の妥当性を検証するために、解析で仮定したいくつかのパラメータに対する不確定さの評価も行った。さらに、スペクトル解析を行う際の時間窓の設定や震源間距離などの影響も評価した。観測された減衰の振幅依存を定式化したところ、振幅の0.1-0.2乗で変化する減衰を考えるとデータをうまく説明できることも明らかになった。震源で励起された地震波は、観測点に到着するまでに幾何減衰により波の振幅が減少するが、今回示した振幅依存の大きさを考慮すると、波線に沿って減衰が60% 程度変化することが想定される。しかしながら,なぜ振幅の0.1-0.2乗に比例するかという理論的な裏付けは十分ではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震波減衰の振幅依存を示す観測成果が得られた。しかしながら、その定量的解釈はまだ十分でなく、次年度以降に理論モデルの構築を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにスラブ内地震について,減衰の振幅依存が確認できた。一方で地震波減衰の振幅依存が地殻とマントルの両方に存在するのか、それともいずれかだけなのかを分離するために、地殻内地震を用いた解析も不可欠である。今後は2008年岩手・宮城内陸地震のデータを再精査し、解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画通りに研究が進んだが、得られた成果を論文として公表するためには、振幅依存に物理的・理論的解釈を加えることが必要である。そのためには地殻とマントルのいずれで減衰の振幅依存が存在するか、また両方に存在する場合には、その振幅依存は異なるか否かなどを明らかにする必要がある。繰り越した経費は学会参加費や学会旅費、論文投稿料などに充てる予定である。
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