2021 Fiscal Year Research-status Report
3,500万年前の哺乳類化石を用いた化石分子系統解析手法の開発とその応用
Project/Area Number |
20K20950
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
実吉 玄貴 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (50522140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
千葉 謙太郎 岡山理科大学, 生物地球学部, 講師 (80826438)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 哺乳類化石 / 古第三紀 / ゴビ砂漠 / ヒエノドン類 / 分子系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の系統進化の理解は長らく形態に基づいてきたが、分子系統学の発展により近年大きく見直されてきた。近年化石から抽出されたタンパク質のアミノ酸配列に基づいて化石種の分子系統が検討されつつある。しかしタンパク質の保存限界は、400万年程度と言われ、大多数の化石標本ではこの手法を用いることができない。一方で、上記の保存限界も、様々な条件でさらに伸びる可能性は考えられるものの、より古い試料からのタンパク質の抽出には至っていない。本研究では、モンゴルの3500万年前の地層から産出した良質の化石標本に新たな生化学的手法を組み合わせることで、数千万年オーダーの化石標本を用いた分子系統学的解析法を開発する。これまでの研究により、古い時代の化石由来タンパク質の解析において問題点であった、抽出法の確立、コンタミネーションの回避などにおいては解決をみており、SDS-PAGEにより明瞭なタンパク質のバンドを確認するに至っている。本研究ではさらに研究を推し進めるべく3500万年前のモンゴル国産哺乳類化石から得られたタンパク質の質量分析器による解析を行なう。さらに、年代ごとに異なる骨基質タンパク質の保存度や保存状態を評価するため、より広い範囲の年代を示す脊椎動物化石試料に対する解析を行っている。これにより、本研究が目的としている古第三系産哺乳類化石に残存する骨基質タンパク質の存在を客観的に評価できる手法開発を目指している。これらの手法が開発されることにより、今後より広い年代範囲を示す化石試料に対する手法の適用が可能となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析データを全現生生物のデータベースと照合したところ相同性を示すアミノ酸配列は得られなかった。データからタンパク質断片のピークは確認されており、その存在は明らかであることから経年変化によるタンパク質の化学修飾等が疑われた。そのため今後、貴重な化石サンプルを用いて研究を展開していくには、効率的なタンパク質回収技術の確立が必要不可欠と考えられた。そこでより時代の新しい備讃瀬戸産ナウマン象化石を用いて、1)化石由来タンパク質の定量法の確立を試みた。2)化石タンパク質の簡便な検出法として、組織学的検出法の検討を行なった。検討の結果、1)化石の状態によってはタンパク質の約半分量が分解せずに残存していることが明らかになった。また残存するタンパク質はコラーゲンが大半を占めており、タンパク質定量法の化石への応用が可能であると考えられた。2)化石に組織染色法を適応することにより、タンパク質が検出可能と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、簡便,確実に微量のタンパク質が検出可能な方法の確立が必要と考えられる。このため、より多くのモンゴル産脊椎動物化石からの試料採取を必要とする。現在、試料送付が完了していることから、試料数についてはある程度の目途がたちつつある。さらに、試料に対する確実な検出方法の確立、検出できた試料に対する抽出技術の向上など、技術的に必要な手法開発の進捗が問題を解決に不可欠である。すでに一部技術開発は進んでおり、抽出後の解析手法の改良によって、タンパク質残存に対する科学的知見を得る予定とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の影響により、2021年度もモンゴルへの渡航が困難であったため、現地にて直接試料を採取することが困難であった。このため予定していた旅費や調査費、試料輸送に関わる輸送費などを使用しなかった。これらの影響によって、予定していた予算の使用につながらなかった。一方で、新たな試料を得るための各種準備を当該年度中にすすめ、2022年度初頭、分析に使用される予定の各種試料が、モンゴルより到着している。また、コロナ禍の影響により封鎖されていた日蒙国境も、徐々に対応が緩和されていることから、今後はモンゴルへの渡航が可能となる情勢であり、6月以降の渡蒙を計画中である。これらの活動を通して、今後さらに予算を使用する研究活動を推進予定である。
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