2022 Fiscal Year Annual Research Report
セルロース・ナノファイバーに基づく力学的メタマテリアルの開発
Project/Area Number |
20K20956
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
花崎 逸雄 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10446734)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 力学的メタマテリアル / 機械的メタマテリアル / オリガミ / キリガミ / プロセス技術 / 応力集中 / レジリエンス / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,セルロースナノファイバーで構成されるナノペーパーという材料を力学的メタマテリアルの観点から機能拡張する.本年度は特に,伸縮性の乏しいナノペーパーに対してキリガミ機構に基づいて曲げ変形の複合化による全体構造の伸縮性を実現する技術をさらに発展させる成果を得た.透明なナノペーパーをレーザー加工することによりキリガミ構造を実装する技術を確立したが,一般に,反復変形に伴って次第に残留ひずみが顕在化することがフレキシブルデバイスやソフトロボティクスへの応用上の弱点であった.これに対して,材料の破壊を回避するための設計指針として昔からよく認識されている応力集中の緩和により,反復変形時の残留ひずみを低減できることを実証した.従来,キリガミ機構は鋭い切り込み線の端点に応力集中が起きるが,材料が柔軟である場合には特に留意される点ではなかった.しかし,反復変形の過程で初期状態に戻りにくくなることは応用上の観点から最小限に抑えたい.力学的メタマテリアルの典型的な設計コンセプトは,物性を根本から変えることなく,素材の構成要素より大きな空間スケールの構造上の工夫により機能を実現することにある.その観点からも,切り込み線の端点の応力集中を緩和する設計により残留ひずみを著しく軽減できたことは,ナノペーパーの機能拡張の観点からも力学的メタマテリアルの意義実証の観点からも重要な成果である.また,本年度はナノペーパーへのオリガミ機構の実装についても技術開発上の進展があった.すなわち,オリガミ機構を実装する上でナノペーパーの物性を活かした技術を確立した.これまでオリガミ機構の研究情勢は幾何学的考察が中心で物性に焦点を当てる事例は乏しいが,本格的な応用展開の波及には物性と幾何の両方の観点が重要になる.
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