2020 Fiscal Year Research-status Report
多層金属ナノ構造を利用した応力誘導原子拡散による極小単結晶ナノウィスカーの創製
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20K20959
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳 悠葵 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (60750180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康裕 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70803740)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 金属ナノ材料 / 薄膜 / ナノワイヤ / ナノチューブ / 応力誘導 / 固相還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の環境・エネルギー問題を解決する手段として,人工光合成が注目されており,二酸化炭素(CO2)の分解触媒として銅のナノ粒子が研究されている.しかしながら現状では,分解時のエネルギー収支(得られるエネルギーに対する分解促進に必要なエネルギーの割合)が悪く,実用的な人工光合成に至っていない.エネルギー収支の改善を行うためには,触媒作用に有効な結晶面を特定し,露出面積を増やすといった対策が有効と考えられる.しかし,ナノスケールの材料を自由な形状で創製・取り扱うことは容易でなく,多くの研究報告では最も単純な粒子状材料に限定されているのが現状である. そこで本研究では,独自のコアシェル型ナノチューブの作製手法を利用し,極小の単結晶銅ナノウィスカーの創製を目的とする.極小ナノウィスカーは粒子状とは異なり,高アスペクト比かつ大きな結晶露出面積を持つ新たなCO2分解触媒として期待できる.初年度に得られた成果は以下の通りである. 1.コアシェル型ナノチューブの膜厚検討:カーボンの膜厚・外皮の膜厚・鋳型材料である酸化銅ナノワイヤの直径など,各種パラメータを選定し,コアシェル型ナノチューブの作成に成功した.また,基板上に分散した酸化銅ナノワイヤをもとに,同時に複数のコアシェル型ナノチューブを作成することに成功した. 2.最適還元条件の確立:カーボン膜を利用した加熱還元過程に対し周囲環境の及ぼす影響を調査するため,真空中・大気中・不活性ガス中などの条件にて加熱還元を実施した.これにより,上述のコアシェル型ナノチューブの作成に成功した.一方,当初予定していたチューブ表面からのナノウィスカーの析出には再現性に検討の余地が残った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた以上に複数のコアシェル型ナノチューブを同時に作成することに成功し,目標であるナノウィスカー創製の大量成長を見込めるようになった.一方,ナノウィスカー創製の再現性には課題が残り,コアシェル構造の寸法や還元条件にさらなる検討の余地が必要となった.総合的に概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,初年度に課題となったナノウィスカー創製の再現性向上のため,再度1.コアシェル型ナノチューブの膜厚検討および2.還元条件の確立に加えて,つぎの通り研究を推進する. 3.ナノウィスカーの結晶面制御:外皮金属および膜厚の選定により,ナノウィスカーの結晶面制御を行う.周方向不均一な外皮の製膜を行う場合,薄膜の不整合ひずみによって出発材料の酸化銅ナノワイヤには曲げ変形が生じる.一方,曲率を有する面から析出するナノウィスカーはその成長位置の格子欠陥の大きさなどに依存した形状,寸法により成長するものと考えられる.また,結晶面の表面エネルギーに依存した優先成長結晶面が存在すると考えられる.以上の点を踏まえ,ナノウィスカーの結晶面制御について調査する. 4.ナノウィスカーによるCO2分解:作製したナノウィスカーを用い,密閉空間に充填したCO2の分解実験を行う.また,ナノウィスカー表面に現れている結晶方位を特定し,分解に寄与する銅の結晶面を検証する.
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Causes of Carryover |
ナノウィスカー成長の再現性の悪さのため,予定していた透過型電子顕微鏡用薄片加工費分が次年度使用額として生じた.また,当該年度に予定していた学会参加がコロナ禍のため中止となったことから,次年度使用額が生じた.次年度では上記の問題点を解決し,当初の予定通り薄片加工費として使用する予定である.また,昨年度中止となった学会への参加を予定している.
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