2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of design platform for controlling collective dislocation structure and creation of nano-scale multi-physics network
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20K20963
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澄川 貴志 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (80403989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ・マイクロ / 転位 / 自己組織化 / ネットワーク / マルチフィジックス |
Outline of Annual Research Achievements |
R2年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。繰り返し負荷用による疲労転位構造形成の程度を確認することを目的として、模擬材料をニッケル単結晶とした。当初計画では、模擬材料を銅としていたが、集束イオンビームを用いて作製した透過試料では明瞭な透過像が得られないことが判明したため、ニッケルに変更した。ニッケル単結晶試験片は、多結晶基板から作製した。単一すべり方位を有し、試験片寸法の異なるドッグボーン型試験片(ゲージ部幅:1μm、2μm、5μm)を用意し、繰り返し負荷試験を行った結果、マクロ材の疲労損傷形成限界よりも低い応力振幅領域においては、サイズの大きい試験片には顕著な変化が見られなかったが、小さい試験片では顕著な突き出し/入り込みが形成された。疲労試験後、試験片を薄片化し、超高圧透過型電子顕微鏡を用いて内部監察を実施した結果、同じ応力振幅であっても内部転位構造に大きな差異があることが明らかになった。特にゲージ部幅5μmの試験片においては、内部に転位双極子によって構成されたベインが存在するものの、表面から数ミクロンの領域とそれより内部領域の転位構造には明確な差が見られた。これは、試験片表面の鏡像力に起因するものと考えられる。ゲージ部幅2μmおよび1μmの試験片については、鏡像力の影響範囲が試験片全体を占めたことから、転位構造に寸法依存性がでたものと考えられる。さらに、二重すべり方位を有する試験片(ゲージ部幅:2μm)を準備し、繰り返し負荷試験を行った結果、異なるすべり系上の転位反応によって、特定のすべり系のすべりの抑制が生じることがわかった。試験後の透過観察では、複数のすべりの活動に伴い、特有の転位構造が形成されていた。これらの実験結果より、材料内部に形成される転位構造は、応力振幅だけでなく、材料寸法や結晶方位の影響を強く受けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度の研究計画は、1. 模擬材料から微小サイズの単結晶試験体を作製し、現有の微小材料用引張圧縮負荷試験装置を用いて繰り返し負荷を与え、試験後の内部観察によって転移の自己組織化構造を観察すること、2. マルチスケール解析手法の整備および解析を実施することである。計画に沿って、疲労時のその場観察、疲労後の材料表面の詳細観察および透過型電子顕微鏡を用いた透過観察を実施した。特に応力振幅の差異、試験片寸法の差異および結晶方位の差異に着目してそれぞれの条件を満たす試験片を作製して実験を行い、その転位構造の詳細観察に成功した。また、解析に関しては、分子動力学モデルおよび転位動力学モデルを作成し、繰り返し負荷を与えてその過程を特定することに成功した。当初想定していた模擬材料である銅では明瞭な透過像が得られないなどの問題が生じたが、適した材料(ニッケル)に変更することによって解決した。研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って計画を実施する。①より複雑な力学条件下での転位の挙動を体系的に理解するために、結晶方位や形状を変えた試験体及び粒界や異材界面を含む試験体を用意し、自己組織化構造を特定する。供試材を他材料(SrTiO3を想定)に展開し、繰り返し負荷を与える。②力学解析を用い、実験結果と併せて複雑化された力学条件下で形成された転位自己組織化構造に及ぼす材料形状と界面の影響、及び、その力学的支配因子を明らかにする。③特定した力学的支配因子を用いて、所望の転位構造(転位網)を実現する試験体を設計する。実際に試験体を作製して実験を行い、所望の転位構造形成の可否について検証を行う。
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Causes of Carryover |
R2年度は、マルチスケール解析を実施するためスーパーマルチチャンネル計算サーバーを導入する予定であったが、対象材料の寸法が小さいことから、計算完了時間の遅延は出るものの現有の計算機で可能であった。一方、強誘電特性を有する転位のネットワーク構造について、その強誘電特性を実測するために、現有装置に対して精度の高い圧電応答素子を用いた試験システムを構築する必要が判明したため、システム構築を優先し、R3年度に導入することとした。
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Research Products
(13 results)