2020 Fiscal Year Research-status Report
塑性境界層に着目した極限摩擦理論の再構築とその応用
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20K20964
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉原 達哉 大阪大学, 工学研究科, 講師 (90637539)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | トライボロジー / 塑性学 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
過酷な条件下における摩擦,すなわち極限摩擦は,一般的なCoulomb-Amontonの摩擦法則には従わず,その特異なトライボ特性の解明と,それらを定量的かつ統一的に示すモデルの構築が強く求められている.本研究では,この問題を解決するために,摩擦界面近傍における材料の塑性流動現象,特に摩擦界面近傍層に形成される「塑性境界層」に着目した検討を行うとともに,塑性境界層における動的挙動の定量的な評価を可能とするため,PIV法を援用した材料の塑性流動現象のin-situ観察手法の確立を図る. 当該年度においては,上述のin-situ観察手法について,くさび状インデンタを用いた押し込み試験を援用した実験装置の構築を行うとともに,PIV法によるインデンタ近傍における材料内部の変位分布,ひずみ/ひずみ速度分布,すべり線場を獲得手法を確立した.そして,先端角の異なるインデンタを用いることによって,圧縮変形や切断/せん断変形といった様々な変形場を再現できることを明らかにした. さらに,摩擦摺動にともなって生じる塑性境界層について,材料をBingham粘塑性体であると仮定した際の理論解を導出し,実験結果との比較を行った結果,界面の摩擦状態の特徴をBingham粘塑性体モデル中の粘性項をパラメータとして記述できる可能性を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,「摩擦界面に生じる塑性境界層に着目したアプローチ」と「塑性流動現象をその場観察するためのコア技術構築」を両輪とした研究を展開している.当該年度ではそれぞれの項目に対して,Bingham粘塑性体としての塑性境界層のモデル化,ならびに,くさび状インデンタとPIV法を用いたその場観察手法の確立,を達成しており,今後の研究を展開していく上で理論および実験面での基礎基盤を構築することができ,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した理論および実験的な基盤に基づき,以下の項目の達成を目指す. (1) Bingham粘塑性体としての塑性境界層のモデル化手法に基づき,流体力学的な観点から見た境界層理論との類似点や相違点,モデル中の各パラメータと材料の変形カーブとの物理的因果関係,変形挙動の経時変化(塑性境界層の成長速度や“なじみ”の影響など),摩擦状態と壁面におけるすべり量の関係などの解明に取り組む.そして,これらの塑性境界層に着目した理論的なモデルの構築により,界面の摩擦環境(あるいはその帰結によって現れる材料の変形カーブ)の違いを定量的に表現する方法の構築を目指す. (2) :本研究で得られた知見に基づいて,(a) 新規提案モデルの有限要素解析への実装,(b) 極限摩擦環境下における潤滑剤性能の定量的評価手法の提案,(c) 超潤滑性を発現する切削工具/金型の開発,などといった新たなトライボロジー技術の構築・展開を図る.
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