2020 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to novel cancer treatment method using micro-particles targeting cancer microenvironment
Project/Area Number |
20K20965
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中島 雄太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | がん治療 / 免疫応答 / マクロファージ / 微粒子 / マイクロパーティクル / サイトカイン / 生分解性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは微粒子を貪食することによって炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-αを産生する知見をこれまでに得ており、本年度は、サイズの異なるPMMA製微粒子を用いてもっとも効果的に炎症性サイトカインを産生する粒子径を明らかにするための評価を行った。具体的には、0.16 μm~19.3 μmの粒子サイズの異なる7種類のPMMA製微粒子を用い、ヒト末梢血から単離した初代マクロファージに貪食させた。この際のマクロファージの生存性やマクロファージが産生する炎症性サイトカイン(IL-6とTNF-α)の産生量を評価した。本評価にはELISAを用いた。その結果、PMMA製微粒子の濃度が濃くなるにつれてマクロファージの生存率が低下することがわかった。また、特定の粒子サイズを用いた場合のみIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインを産生することがわかった。これらの検証により、マクロファージが生存し、最も効果的に炎症性サイトカインを産生する条件を明らかにすることができた。 さらに、材質の異なる微粒子を用いたサイトカイン産生能の評価を行うための準備として、PMMA製微粒子と同程度のサイズパラメータを持つ粒子の製作について検討を進めた。具体的には、コラーゲンやヒアルロン酸などのゲル材料を候補材料とし、これらの材料を微粒子化することを検討した。微粒子化するために、マイクロ加工技術を用いてデバイスを製作した。製作したデバイスを用いて微粒子化した結果、現時点では、目標とするサイズの微粒子よりも大きな微粒子が形成されたことを確認した。今後、本デバイスを用いた微粒性製作条件の検討やデバイス構造の設計などを行うことにより、目的のサイズの微粒子を製作する。これについては次年度の検討課題とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、微粒子を貪食した際のマクロファージの炎症性サイトカイン産生に関する評価を実施しており、その中でも特にIL-6やTNF-αを産生するPMMA微粒子サイズを明らかにすることに成功した。上記の通り当初の計画を着実に実行しており、また、生分解性の微粒子の選定に関する検討も開始しており次年度も計画に沿った研究推進が可能である。これらのことから、今年度の達成度はおおむね順調であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して微粒子を貪食したマクロファージが産生するサイトカインについて検証を進め、産生するサイトカインの種類についても検討する。本検証に関する実験方法はこれまでの実験を踏襲するため、実施すれば必ず結果は得られる。また、本年度に得られた成果を基に、生体内で分解される材質の微粒子をマクロファージに与えた際の炎症性・抗炎症性サイトカイン産生能を評価する実験開始する。本実験を進めるうえで、生分解性の微粒子を形成する必要があり、現時点では申請者が持つマイクロデバイス技術を用いて製作することを検討している。次年度の早い段階で目的のサイズの粒子形成が可能なデバイスを実現し、マクロファージを用いた実験に使用する予定である。 一方、次年度後半では、微粒子を貪食したマクロファージが産生したサイトカインを用いることにより、がん細胞が減少あるいは消失することを実証する実験を開始する。また、マクロファージとがん細胞を共培養し、これまでに明らかにしてきた微粒子を投与することによって、マクロファージと共存するがん細胞が減縮することを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究遂行中にリアルタイムPCR装置の導入の必要が出てきたため、本年度中の装置の選定と導入を検討した。しかし、コロナ禍の影響もあり、メーカーとの打合せやデモ機の手配の関係で装置の選定に遅れが生じた。また、納期、納品に関するメーカーとの調整も困難であり、結果的に年度内の納品が実現できなかったため、次年度使用額が生じた。導入予定の装置は既に選定が完了しており、次年度の早い段階(5月頃)に導入できる予定である。
|