2020 Fiscal Year Research-status Report
プラズマを利用したキャビテーション気泡内圧力・ガス種リアルタイム同時計測
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20K20969
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 気泡 / 圧力 / 放電 / パッシェンの法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,単一キャビテーション気泡の気泡崩壊時に発生する衝撃波,化学反応,発光などの物理現象を支配する重要な因子である気泡内圧力やガス種を実験的に計測する手法の開発ならびに計測による新しい知見の獲得を目的とする.令和2年度は,広範な圧力変化が短時間で起こるため計測が困難であった単一キャビテーションの気泡内圧力について,放電現象を利用した新しい圧力測定法を開発した.実験装置は,気泡発生部,可視化部,放電部からなり,水を満たした容器内に平行するワイヤ電極を設置し,電極間にナノパルスレーザーを収束することで,気泡を発生させた.気泡が成長すると2つのワイヤ電極を包含するが,ワイヤ電極間距離 d と電極に印加する電圧 V を適宜設定すると,電極間で放電が発生する.このときの気泡の変化を高速度カメラで撮影し,放電時の気泡径と最大径を計測する.ここで,電極間距離 d と圧力 p の積 pd と放電開始電圧の関係を表すパッシェン曲線を用いると,既知の d と測定した V から p を求めることができる.さらに,放電時の気泡径を最大径で無次元化することで,気泡径と圧力の相関を求める.印加電圧は 1.5 kV と 2.0 kV とした.最大径の時の圧力は,放電時の圧力から断熱変化を仮定して求めた.これにより,気泡が最大となるときの圧力の推定に成功した.気泡最大径における気泡内圧力は,電極間距離および印加電圧にかかわらず,概ね一定の値となり,平均値は 0.39×10^5 [Pa] であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である,(1)実験装置作製と放電開始電圧の計測の実施をし,気泡内で放電をさせそのときの気泡の挙動を可視化する装置の作製に成功した.これにより,膨張中の気泡内で放電開始電圧の計測を可能とした.(2)気泡内のガス種の特定と気泡内圧力計測の実施をし,気泡内圧力の推定に世界で初めて成功した.ガス種の特定については,水蒸気中の放電の発光分析を行う手法を検証し,気泡内への適用をする段階まで準備した.(3)ガス種の定量解析については,気泡内に含まれる水蒸気や窒素,酸素を想定した混合ガスを生成する装置を準備し,放電時の発光特性によりその割合について検討した.(4)現象の一般化については,放電時と最大径の時の気泡の可視化解析より気泡径と時間を無次元化し,気泡が最大となるときの圧力の推定に成功した.以上の成果より,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,(1)リアルタイム計測法の開発を実施する.令和2年度に構築した圧力計測方法を改良し,電極を平板状に変更しより高い精度で放電開始電圧を計測できるようにする.また,ストリークカメラに新たに購入する分光器を装着し,放電時の発光分光を高時空間解像度で解析する.これらの装置を作製した上で,電圧を変化させ,気泡の膨張時の圧力変化とガス種の変化について計測する.特に,気泡崩壊時に発生する発光を分光することで,崩壊時に含まれるガス種の比率の変化についても明らかにし,気泡収縮時に溶解しやすいガスを特定する.(2)計測プローブの作製については,光ファイバーと微小電極を組合せた微小域圧力・ガス種リアルタイム同時計測プローブを作製し,新しい気泡内現象を解析する計測装置の開発を目指す.
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Causes of Carryover |
令和2年度は,ガス種特定のための発光分析において,高速かつ微弱な発光の検知が必要であることが明らかになったため,令和3年度において,より高速で高感度に計測できる既存のストリークカメラに分光器を装着し計測することとした.令和2年度の予算では分光装置の購入が難しかったため,令和3年度に合算し購入することとした.
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Research Products
(3 results)