2020 Fiscal Year Research-status Report
Application of quantum computing to many-body coarse-grained molecular simulations
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20K20970
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杵淵 郁也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30456165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 勇太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90772137)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 粗視化分子シミュレーション / 量子コンピューティング / メソスケール / 多体効果 / 散逸粒子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
Lennard-Jones (LJ)流体の分子動力学シミュレーションから統計量を抽出し,多体性を考慮した粗視化シミュレーションモデルを構築する方法について検討した.系内のLJ粒子を一定の個数毎にグループ分けしたクラスターを定義し,クラスターの重心運動を粗視化粒子の運動と考えた.クラスター間に作用する力は,それぞれのクラスターに属するLJ粒子間の相互作用の合力として評価した.クラスター間に働く力は,着目している2つのクラスターの相対位置のみではなく,周囲の他のクラスターの影響により変化する.このような多体性を表現するために,着目するクラスターの周囲に存在するクラスターの影響を立体角上に射影した分布を導入した.具体的には,周囲のクラスターの方位に適切な強度と広がりを持たせたガウス分布を配置することで分布を作成する.その分布を球面調和関数により展開し,各次数,位数の分布に対応してクラスターに作用する力の平均値を求める方針を採った.クラスターに作用する力を各次数,位数の寄与に分離するために,相互作用モデルをQUBO (Quadratic unconstrained binary optimization)形式で定式化し,量子アニーリングシミュレータを用いて各次数,位数の寄与を分離することを試みた.クラスターに作用する力の向きと大きさは,複数のバイナリ変数によって表現される.現状では十分に収束した結果を得ることが困難であるという問題があるが,相互作用モデルの構築方法について見通しを得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の取り組みにより,粗視化粒子間の相互作用モデルに多体性の影響を導入する方法について見通しを得ることができた.本研究で採用した方法では,周囲の粗視化粒子の影響を立体角上に射影した分布を導入することで,多体性の影響が表現される.Lennard-Jones流体の分子動力学シミュレーションについてはこれまでに系の構築は完了し,統計量の取得についても進行中である.分子動力学シミュレーションの結果から統計量を抽出する後処理プロセスについてもプログラムの整備を行った. 上述の分布を球面調和関数により展開し,粗視化粒子に作用する力に対する各次数,位数の寄与を分離するために,量子アニーリングシミュレータを利用した.現時点では方法の検証が目的であるためシミュレータを利用したが,将来的には量子アニーラーの実機の利用を視野に入れている.現状ではアニーリング結果の収束性に問題があり,各次数,位数の寄与の分離に課題が残っているが,モデリングの方針は明確になっていることから,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
周囲の粗視化粒子の影響を表現する分布を球面調和関数により展開した際に,各次数,位数の寄与を分離する方法について,さらに検討を進める.具体的には,低次数から順番に寄与を決定していく手順が有効であると予想している.また,分子動力学シミュレーションから抽出したクラスター間に働く力のサンプル数が十分でない可能性もあるため,この点についても検証する. 粒子の周囲の環境を表現する方法として,SOAP (smooth overlap of atomic positions)記述子が提案されている(A. P. Bartok et al., 2013).本研究での多体性相互作用の表現方法との関係を整理し,今後のモデリングに活かしていく方針である.
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