2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a minimally invasive electronic sheet for ex vivo monitoring of artificial cardiomyocyte tissue
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20K20986
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梅津 信二郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70373032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 勝久 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (70468867)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | スマートエレクトロニクスシート / 心筋細胞 / 変形 / 孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
分化誘導したiPS細胞を利用した創薬研究が注目されている。その際、エレクトロニクスシートを利用して心筋細胞の細胞外電位の測定・評価を行うような研究が展開されている。iPS細胞由来心筋細胞の創薬研究の場合、拍動に伴う動きが発生するため、エレクトロニクスシートのような薄膜を測定に利用することが、好ましい。硬い基板の上で培養した心筋細胞組織の場合、実際のような動きを伴わないため、正確な創薬研究が行えない可能性があるからである。 申請者らはこのような問題を解決できるスマートエレクトロニクスシートを開発している。本研究では、『生体外で、人工心筋細胞組織をモニタリングするための改良』を行い、特性を評価した。 エレクトロニクスシートに対して、孔を設けることによって、心筋細胞組織に対する侵襲性を大幅に低減できる。エレクトロニクスシートによって物理的に分断させる細胞間のネットワークを妨げなくなるからである。一方で、このような孔は、局所的に機械的剛性が著しく低下する。逆に考えると、エレクトロニクスシートの剛性を局所的にコントロールできることから、心筋細胞の一次元的な伸縮動作を立体変形へと応用可能である。実際の心臓は立体的なねじり変形を実現しているが、これは心筋細胞の足場材によるものが大きいと考えている。そこで、本年度は、孔のサイズを極小化するとともに、デザインを調整することによる変形などに与える影響をモニタリングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、サイズ10μmの孔を安定してエレクトロニクスシートに多数設けることが可能なことを実証した。この孔を多数設けることによって、細胞がエレクトロニクスシートの表面だけでなく、裏面にも回り込んだ上で、エレクトロニクスシートと一体型になる。通常の場合、エレクトロニクスシートの上面に細胞が播種されるだけのため、エレクトロニクスシートと細胞との密着性はあまり高くない。しかし、本研究成果の場合、密着性は、細胞ーエレクトロニクスシートの密着によるものに加えて、孔における細胞ー細胞の密着が加わる。後者は、細胞同士であり、高い密着性を発揮する。従って、この組織は、長期に渡る培養を行っても剥がれない。通常は、1週間程度の培養を行っただけで、僅かな界面剥離を起こし、これが進展し、エレクトロニクスシートと細胞組織が剥離する。しかし、このようなことが全く起きないのは、画期的な成果である。また、組織の内部にエレクトロニクスが組み込まれていることから、安定して、長期間の測定を実現できる。 また、関連する生体センサの開発もあわせて行い、生体情報の計測が可能なことを実証した。 これらの成果から、本研究は当初の研究以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
孔があることで、密着性が大幅に向上するメカニズムを機械工学的・生化学的アプローチによって解明する。その上で、密着性の観点から、孔のデザインの最適化を行う。モニタリングに適している孔のデザインを探索することによって、創薬研究・バイオアクチュエータとしての応用がしやすくなる。 本研究成果の一番ユニークな点は、細胞とエレクトロニクスシートという異種の材料であるにも関わらず、高い密着性を長期間に亘って示す点である。このような特性があることによって、長期間に亘っての薬効評価や実用的なバイオアクチュエータの開発が可能になると考えている。ただ、長期間に亘って培養が可能になることによって、細胞の成熟度が変わってくることから、成熟度の評価に関しての基礎的な実験も将来的に検討していきたい。 また、薄膜エレクトロニクスは、各種センサに利用されている。本研究で培ったノウハウを活かして、関連するセンサ技術開発にも役立てていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナによって出張がすべてオンラインになったため、旅費の分が余った状態となった。しかし、本研究は極めて新しく、そして学術的に重要な内容であるので、来年度超過分を実験費用に回すことで、さらなに研究を発展させる。
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