2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20987
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
金子 真 名城大学, 理工学部, 教授 (70224607)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 赤血球変形能 / マイクロ流体チップ / 人工毛細血管 / 脳活性度 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は大きく赤血球変形能評価、脳活性度評価、両者の相関、という切り口がある中で、これまでの研究実績を以下にまとめる。 (1)マイクロ流体チップを用いた赤血球変形能評価:等価直径が異なる複数の人工毛細血管を内蔵したマイクロ流路を用意し、人工毛細血管を通過する際の赤血球変形度合と通過速度から赤血球変形能評価マップを構築する方法について考察した。例えば、同じ大きさの赤血球が、等価直径が異なる人工毛細血管内を通過する場合、赤血球の硬さが同じであれば、等価直径が小さい人工毛細血管を通過する際、変形量が大きくなり赤血球の移動抵抗が増加し、結果的に赤血球の通過速度が低下する。予備実験により変形度合と通過速度の間には負の相関が現れ、この相関度合いの強弱から赤血球変形能を定量的に評価できる目途がたった。 (2)毛細血管血流の非侵襲観察:血液を採取しないで毛細血管血流スコープ(GOKO Bscan-z: 2020年度購入)を用いて毛細血管内血流を非侵襲で観察する方法にもチャレンジした。この方法は爪の根元部の毛細血管内の血流を拡大鏡を用いて視覚的に観察する方法である。被検者に応じて二パターンが観察された。一つは毛細血管内血流の流れが常時観察されるパターンで、もう一つは間欠的にしか流れが発生しないパターン。毛細血管の血液が絶えず連続的に流れるのではなく、被検者に応じては間欠的に流れる場合も起こりえることは想定外の結果であるとともに学術的には興味深い結果である。 総合的に判断して、赤血球変形能を評価する上で、申請者らが考案した人工毛細血管を内蔵したマイクロ流体チップを用いる方法の有効性が確認できたことは、赤血球変形能と脳活性度相関に向け、大きな一歩を踏み出したと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は大きく赤血球変形能評価、脳活性度評価、及び両者の相関、という切り口に分けられる。このうち脳活性度については、fMRI(磁気共鳴機能画像法)等脳活動を調べる方法はすでに実用化されているものの、赤血球変形能計測についてはいまだ実用的な方法は開発されていない。特に毛細血管通過中の赤血球変形能計測については直径5マイクロメートル以下の人工毛細血管の製作が難しいこともあり、体内毛細血管を想定した赤血球変形能計測ができていないのが実情であった。このような現状を踏まえ、申請者らが開発した等価直径5マイクロメートル以下の人工毛細血管を複数内蔵したマイクロ流体チップを用いて赤血球変形能計測が予備実験で確認できたことは、今後の赤血球変形能と脳活性度相関について考察する上で一番困難と考えられていた赤血球変形能計測の可能性が見えてきた。以上が「おおむね順調に進展している」と判断した根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
赤血球変形能と脳活性度との相関について、二段階ステップで対応する。第一ステップでは、赤血球変形能のエージング効果について考察する。もし、赤血球変形能と年齢との間に相関がでれば、きわめて興味深い結果となる。第二ステップでは脳活性度と赤血球変形能データを統計処理することで赤血球変形能と脳活性度との相関について考察する。なお赤血球変形能評価実験は倫理委員会規定に従って共同研究先の大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学(基礎実験機器配置済)においてマイクロ流体チップの製作、実験、データ処理の協力を得ながら遂行する予定である。なお台湾からの来日が可能になった場合には共同研究先のDylan Tsai博士(台湾交通大学)の協力も見込んでいる(Dylan Tsai博士からは内諾済)。またfMRI(磁気共鳴機能画像法)による脳活性度評価が困難な場合には簡易知能指数で代替することも視野に入れている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:マイクロチップの製作、赤血球変形能実験、及びデータ処理は共同研究者のDylan Tsai博士(台湾交通大学)の協力を見込んで旅費・人件費・謝金を概算で\340,000(旅費@100,000、滞在費@140,000、謝金@100,000)確保していたものの、感染症拡大の影響で来日できず、赤血球変形能実験が予定通り実施できなくなり、当初Dylan Tsai博士の来日予算分(\340,000)は次年度送りとした。さらに共同研究先の大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学との対面研究打ち合わせは実質的にオンライン会議になり、国内外の学会出張はすべて見送ったためその旅費分(\1,689,507)も次年度送り分とした。 次年度予算使用計画:次年度繰り越し分の予算(\2,029,507)は物品費(\829,507)、人件費・謝金(\600,000)、その他(\600,000)を令和3年度の当初助成金額(物品費:\100,000、人件費・謝金:\100,000、その他:\200,000)に上乗せする。これによりDylan Tsai博士が来日して赤血球変形能実験ができる可能性が残せるだけでなく、脳活性度実験、データ解析等の人件費・謝金、論文出版料にも対応可能となる。
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Research Products
(3 results)