2020 Fiscal Year Research-status Report
Specific and highly sensitive detection of volatile organic compounds by complex surface plasmon sensors with DNA aptamers
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20K20996
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | SPRセンサ / 複素屈折率 / 揮発性有機化合物 / DNA / 強磁性金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
気相中の揮発性有機化合物を特異的かつ高感度で検出するために、分析物の複素屈折率の変化を検出する複素表面プラズモン共鳴(SPR)センサの実現・感度向上と、金属表面へのDNAの固定によるガス分子の選択的検出を試みた。SPRセンサを構成する金薄膜の膜厚を同一面内で変調したくさび型構造をもつSPRセンサを作製し、感度を左右する性能指数が従来のSPRセンサと比較して3.6~6.4倍向上することを明らかにした。くさび型SPRセンサの特性を評価する実証実験をエタノールガスの検出実験により行った。0.2%のエタノールガス(屈折率変化2x10^(-5))を検出することに成功した。今後、DNAを固定することで、金属表面におけるガス分子濃度を上昇させ、更なる高感度検出を目指す。またイソプロパノールやサリチル酸メチル等の他の揮発性有機化合物を導入し、DNAによる表面濃度上昇とガス種の関係を明らかにする。 揮発性有機化合物が金属表面で液化した時の光吸収を評価するために、エタノール、イソプロパノール、サリチル酸メチルの気相、液相での消光係数を可視光~近赤外光にて評価した。いずれも波長1300nmより長波長側にて1x10^(-5)を超える消光係数を示すことがわかった。そこで、波長1260~1360nmの波長帯で複素屈折率の実部と虚部の変化に対して、感度を最大化するために、表面プラズモン共鳴センサを構成する金薄膜の一部に強磁性金属のFeを導入し、磁化反転に伴う表面プラズモンの波数の変調を通じた感度の向上を目指した。ガラス基板上の金薄膜の一部に厚さ5nmのFeを含む多層構造を製膜し、全反射減衰法にて反射率の変調度を評価し、最大で15%の変調度が得られた。性能指数や上記3種類のガスの検出特性、表面濃度上昇に伴う液化による光吸収の増加に伴う複素屈折率の変化による高感度検出について次年度検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心となる、分析物の複素屈折率の変化を検出する複素SPRセンサの研究を、①くさび型構造を金薄膜からなるSPRセンサと②金薄膜の一部に強磁性金属を導入したSPRセンサの二つのアプローチから取り組んだ。①については金薄膜の構造設計、作製とエタノールガスによる検出特性を検証した。②については設計、作製と高感度化のための磁気的変調に取り組み、基本実証に成功した。研究費により、微量ガス発生装置、センサ特性を取得するための光源、光学機器、光検出器等の一連の機器を導入し、ガス検出特性を取得するための実験装置をセットアップすることができた。今後、揮発性有機化合物を導入し、センサ特性を明らかにする。①、②とも金薄膜の表面にDNAを固定化し、金属表面におけるガス分子の濃度の上昇とガス分子の種類の違いによる検出特性の違いを明らかにする計画を立案していたが、金薄膜表面にチオール修飾によってDNAを固定化する際のプロセスの一部に問題があり、その解決に時間を要した。金薄膜の作製方法を見直すことで固定化プロセスを解決できるめどがたったため、次年度以降、DNAを固定化した複素SPRセンサによる揮発性有機化合物の高感度検出とガス種と検出特性の関係を明らかにし、揮発性有機化合物の特異的検出を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
くさび型SPRセンサの表面に2種類のDNA(SEQ.1, SEQ. 2)を固定し、エタノール、イソプロパノール、サリチル酸メチルの3種類のガスを導入し、DNAによる表面ガス濃度の上昇による高感度検出とガス種の違いによる検出特性の違いを明らかにし、揮発性有機化合物の特異的検出を目指す。波長1300 nm帯で動作する複素SPRセンサに上記3種類のガスを導入し、表面における濃度の上昇に伴う液化が生じていないかを複素SPRセンサの出力信号から検証する。次年度の前半で1~10 ppmのガスの検出を、後半で1 ppmを切る濃度での検出を目指す。なお、今年度、金薄膜表面へのDNAの固定化に苦労した経験から、チオール修飾によらないDNAの固定化方法を確立する。具体的には金薄膜の表面にグラフェンを転写し、グラフェンを介したDNAの高密度固定化を目指す。SEQ. 1, SEQ. 2以外にガス分子を吸着するDNAを検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度は参加・発表した学会がオンラインで開催されたため、支出を予定していた国内旅費が不要となった。また、2021年3月に出版された学術論文1報については、出版費用を2021年度に計上することとした。以上の理由により次年度使用額が生じた。2021年度は学会の一部が現地で開催される予定であり、学会に参加するための旅費として支出する計画である。また、2021年3月に出版された学術論文の出版費用を2021年度に支出する計画である。
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