2021 Fiscal Year Research-status Report
Specific and highly sensitive detection of volatile organic compounds by complex surface plasmon sensors with DNA aptamers
Project/Area Number |
20K20996
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | SPRセンサ / 複素屈折率 / 揮発性有機化合物 / DNA / 強磁性金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
気相中の揮発性有機化合物を特異的高感度で検出するために、分析物の複素屈折率に着目した複素表面プラズモン共鳴(SPR)センサの実現・感度向上と、金属表面へのDNAの固定化によるガス分子の選択的検出を試みた。金薄膜の膜厚を基板面内で変化させたくさび型構造をもつSPRセンサを作製し、反射光輝度の角度依存性を集光レンズとカメラの組み合わせにより測定し、様々な種類・濃度をもつガスを入力した時の反射光強度の時間推移を測定した。反射光輝度と、反射率が最小となる入射角度の両方を測定することで、表面の屈折率と吸収係数の違いの両方を観測した。ガスとして親水性の性質をもつエタノールと疎水性を示し、湿布の消炎剤として用いられる匂い分子の一種であるサリチル酸メチルを用いた。濃度4, 12, 27, 90 ppmのエタノールガス、濃度7, 158 ppbのサリチル酸メチルを導入したところ、ガスの導入初期にはもともと表面に吸着していた水蒸気の脱離が見られ、その後ガス分子が吸着した様子が観測された。また、ガスを窒素に切り替えたときに、吸着したエタノールやサリチル酸メチルが脱離する様子が見られ、上記の濃度のガスを準リアルタイム検出することに成功した。上記の濃度の範囲では信号変化が濃度によらず一定であったため、より低い濃度のガスを検出できると考えられる。SEQ1, SEQ2と呼ばれる配列をもつDNAを固定化したところ、ガス供給前の水蒸気の量やガスの導入に伴う信号が大きくなったことから、感度を大きくすることができたと考えられる。一方でエタノールとサリチル酸メチルとで信号の増え方に大きな変わりがなかったため。選択的検出には至らなかった。サリチル酸メチルを認識するDNAの固定化により、サリチル酸メチルの特異的検出と生物の嗅覚(濃度0.1~1 ppb)に迫る高感度検出の実証を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常のSPRセンサでは、反射光強度、もしくは、反射光強度が最小となる角度のどちらか一方をモニターし、かつ、ガスの吸着と脱離をモニターできる例は少なかった。本研究では、信号を画像として、時間推移も含めて取得し、上記の両方をモニタリングすることができた。ガス濃度の計測、特に高感度検出において、表面に吸着した水蒸気の影響は大きく、その脱離と測定したいガスの吸着と脱離の両方を検出することができたのは大きな成果と考えている。令和4年度は検出したいサリチル酸メチルを認識するDNAの固定化により、特異的高感度検出を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は検出したいサリチル酸メチルを認識するDNAの固定化による特異的検出を行う。ガス供給系の改良により、嗅覚(0.1~1ppb)に迫る高感度検出を目指す。測定する波長として、より吸収の影響の大きく選択的検出に有利な波長1300 nm帯の光を入力し選択的検出特性を向上させる。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウィルス感染症の拡大による研究活動制限や実験室が入居する建物の改修工事に伴う引っ越しに伴い、研究活動の進展が想定より遅延し、2021年10~2022年2月頃研究成果が得られた。また、参加・発表した学会がオンラインで開催されたため、支出を予定していた旅費が不要となった。得られた研究成果は2022年度に論文発表することとなった。以上の理由により次年度使用額が生じた。研究成果を出版するための費用を2022年度に支出する計画である。
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