2021 Fiscal Year Research-status Report
Challenge aimed at the prediction of the electronic properties of organic amorphous semiconductors
Project/Area Number |
20K21007
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻田 俊雄 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10285314)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 有機アモルファス半導体 / 電子物性予測 / アモルファス構造 / Successive Conduction 法 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究実績を踏まえ、本年度の研究実績を下記に示す。 1) 正孔輸送性を示す分子の凝集アモルファス構造を分子動力学法により作製し、各分子間の電荷移動速度、分子間相互作用を求めることで電子物性(正孔移動度、禁制帯中の局在準位分布、価電子帯の状態密度)を予測する手法を確立することができた。昨年度対象とした正孔輸送性分子以外の電子物性の予測値と実験結果とを比較することでこの手法の有用性をさらに実証することができた。 2) 電荷移動度を求める独自の統計的計算手法であるSuccessive Conduction (SC) モデルに対して、多体効果を含めることで比較的大きなパイ共役系をもつ分子や対称性が高い大きな分子にも利用できるように拡張した。本手法は従来から用いられている Kinetic Monte Carlo (KMC) 法と比較すると100倍以上高速に移動度を計算することができることから、分子のスクリーニングにおいて有効な手法になることが期待できる。 3) アモルファスにおいて目的の電荷移動度をとる分子設計システムを構築した。人工知能Artificial Intelligence (AI) の一つである機械学習を用いて、既知の分子構造と電荷移動度を学習させ、目的の電荷移動度をとる分子の特徴を再現する分子骨格を自動生成するシステムの確立を目指したものである。本システムにより候補分子を生成したのち、上記1)で記載した拡張SCモデルとKMC法により電荷移動度を予測することで、分子合成の省力化に貢献しうる強力な分子設計手法となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) 正孔輸送性を示す分子の凝集アモルファス構造を分子動力学法により作製し、各分子間の電荷移動速度、分子間相互作用を求めることで電子物性を予測する手法を確立できた。 2) 複数分子からなる系の電子波動関数は、これらの分子に非局在化した分子軌道として電子分布を与える。分子軌道の存在確率に依存する電子密度を定式化することで、ホッピングモデルに展開し拡張型SCモデルを開発した。これにより、実験事実と整合性がある結果を得ることに成功している。また従来のKMC法のプログラムも作成し、SCモデルとの比較検討を行うことができる体制が整った。KMC計算は分子間の移動速度定数に基づいて時々刻々の電荷移動を分子シミュレーションで追跡することで移動度を計算することができる。KMC法は我々のSCモデルと比較すると50倍以上の計算コストがかかるものの、具体的な電荷の移動状況を追跡できるメリットをもつ。拡張型SCモデルの信頼性を高めるために必要な微視的情報を与えるものである。 3) SCやKMCモデルのいずれもが、分子を与えることで電荷移動度を予測する手法である。そこで、目的の電荷移動度を与えることで分子構造を提案するシステムの構築を目指した。初めにAI (random forest法) を用いて目的の移動度と複数の物理パラメータの関係を抽出することに成功した。効率の面で改善の余地があるものの、デバイス設計において画期的な初期システムとなった。 4) 研究実績としては順調に推移しているが、主に研究代表者が多忙(昨年度が定年退職の年度に当たり講演等で多忙)であったため、論文執筆の遅延、感染症による国際会議の延期等により研究成果の広報が遅れており、区分は“やや遅れている”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 拡張したSCモデルは、アインシュタインの酔歩モデルを利用して移動度算出を行っている。一方、分子集合体においてKMC法を用いて解析した結果は特定の分子対に長時間電荷がトラップしている結果が得られた。これは、電荷移動度の方向不均一性に起因しており、特定の方向に対する電荷移動が順方向と逆方向で相違を生じる結果である。今後、酔歩モデルを実際の異方性を考慮したモデルに改善することで、SCモデルのさらなる高精度化を目指す。 2) 深層学習による分子設計システムは3億以上の分子情報をもつ無料のZincデータベースから比較的小さな25万分子程度について分子骨格形成規則の学習を行っている。学習する分子数を単に増やせば、分子骨格形成規則の信頼性が高くなるものの計算資源が膨大になるため実際には困難が伴う。そこで、学習用のデーターベースから材料系で比較的よく利用される環構造を有するものだけを抽出する工夫を行うことで、材料設計に適した効率的学習を行うよう改善を目指す方針である。
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Causes of Carryover |
・研究代表者のその他の業務の多忙 ・参加を予定していた学会や研究会などの中止や延期によるもの ・感染症の流行
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Research Products
(77 results)