2020 Fiscal Year Research-status Report
有機ラジカル分子接合トランジスタの創成と巨大磁気抵抗効果の発現
Project/Area Number |
20K21010
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
早川 竜馬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (90469768)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 有機ラジカル / 巨大磁気抵抗効果 / 自己組織化膜 / スピントランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、有機ラジカル分子接合における巨大磁気抵抗効果の発現メカニズムを明らかにし、新規縦型スピントランジスタへ拡張することを目的としている。これまでメカニカルブレークジャンクション法により非磁性電極(Au)を用いたオリゴフェニレンエチニレン有機ラジカル分子接合(TEMPO-OPE)で6 Tの強磁場ではあるが287 %に及ぶ正の巨大磁気抵抗効果を観測することに成功し、不対電子スピンによって母体分子の伝導制御が可能であることを示してきた。磁気抵抗効果の発現メカニズムを検討するために単一準位モデルにより電流-電圧特性を解析した。その結果、Au電極/分子接合界面での相互作用が磁場により弱められることで正の磁気抵抗効果が発現することが分かった。そこで本年度はTEMPO-OPE分子をトンネル絶縁膜に内包し、電極と接合しない状態で磁気抵抗効果が生じるかどうか検討した。 SiO2 (1 nm)/ Si基板上にTEMPO-OPE分子を真空蒸着法により10^12 cm-2の数密度で蒸着し、孤立分散した状態を形成した。さらに原子層堆積法によりAl2O3を3 nm形成することで分子をトンネル絶縁膜中に内包した。これは走査型トンネル分光法と同じ原理で単分子に起因するトンネル伝導を評価できる。走査型トンネル分光法では真空がトンネル絶縁膜となるが、上記素子ではSiO2およびAl2O3がその代わりとなる。5 Kにおいて分子軌道を反映したトンネル電流を観測することに成功した。また、予備検討の段階であるが磁場を試料に対して垂直方向に1.5Tの磁場を印加することで3 %程度の磁気抵抗効果を観測した。今後、8 Tまで印加できる超伝導マグネットを用いて磁気抵抗効果を評価し、電極/分子接合界面でのカップリンの寄与について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展している。本年度は、有機ラジカル分子接合での巨大磁気抵抗効果の発現機構を明らかにすることを目的とした。単一準位モデルを用いた単分子接合での電流-電圧特性を解析した結果、電極/分子界面での相互作用が磁場により変化することが分かった。電極/分子接合界面での相互作用がどの程度磁気抵抗効果に寄与するのか評価するため、分子を孤立分散した状態で絶縁膜に埋め込んだトンネル接合を形成した。分子軌道を反映したトンネル電流を観測することに成功し、磁気抵抗効果を評価するための準備ができた。今後、8 Tまで印加できる超伝導マグネットを用いて磁気抵抗効果を評価し、電極/分子接合界面が磁気抵抗効果に与える影響について明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、巨大磁気抵抗効果の発現に分子/電極界面での相互作用が重要な鍵であることを明らかにするために、有機ラジカル分子を絶縁膜に内包したトンネル接合素子を形成した。予備実験ではあるが、1.5Tの印加磁場では3 %程度と有機ラジカル分子をAu電極に直接架橋した場合と比較して低い値を得た。来年度は8 Tまで印加できる超伝導マグネットを有したクライオスタットを用いて磁気抵抗効果を評価する。また、有機ラジカル単分子接合において面内方向に磁場を印加して磁気抵抗効果を評価する。 一方で高集積可能なスピントランジスタを実現するために、単分子を用いた単分子接合から自己組織化膜を用いた分子接合に拡張する。Au電極上に有機ラジカル自己組織化膜を形成するプロセスを確立し、非弾性トンネル分光法を用いて有機ラジカル単分子接合が形成していることを明らかにする。面外および面内磁場を印加した際の磁気抵抗効果を評価する。
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