2021 Fiscal Year Annual Research Report
Artificial control of superconducting transition temperature and its applications to detector devices
Project/Area Number |
20K21011
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大谷 知行 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (50281663)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 超伝導 / メタマテリアル / 超伝導転移温度 / 制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導体の超伝導転移温度(Tc)は物質固有の値とされ、より高いTcの実現のために新たな物質探索が精力的に行われてきた。一方、2016年にSmolyaninovaらは「10 nm程度の薄いAl超伝導薄膜と酸化アルミ(AlOx)絶縁体を交互に10層程度積層した構造で、バルクのTc(1.2 K)を大きく越える温度(約2 K)での超伝導転移を見出した」と報告し、その解釈として、超伝導ハイパボリックメタマテリアル構造のために、実効誘電率が膜の並行方向と垂直方向とで非対称となり、Cooper電子同士の引力相互作用が強められている可能性を指摘した。そこで本研究では、制御性と再現性の高い超伝導体-絶縁体の積層薄膜によりマイクロ波力学インダクタンス検出器(MKIDs)を作製し、周波数2-8 GHzでのマイクロ波透過ゲイン測定で上記の実験的検証を目指した。 2021年度は、2020年度に引き続き、制御性と再現性の高い超伝導体-絶縁体の積層薄膜を用いて、3層構造(Al/AlOx/Al)のデバイスを作製して、5層構造のデバイスとの膜数の違いによりTcの違いが生じるかどうかを調べた。その結果、層数が3層でも5層でもTcの値は1.7-1.8 Kと大きな差異は観測されなかった。このように、多層化によってTcがさらに高まる効果は確認されず、また、Chubovら(1969)の結果とも矛盾がないことから、超伝導ハイパボリックメタマテリアルの効果によりTcが上昇したという事実は確認されなかった。一方、超伝導転移端付近でのマイクロ波ゲインの違いを温度の関数として調べた結果、前年の結果と矛盾しない傾向が確認された。その解釈として、例えば、光誘起クーパー対解離のようなことが起こったということも考えられるが、電力印加の周波数依存性による影響の可能性も依然としてあり、明瞭な決着をつけるには至らなかった。
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