2020 Fiscal Year Research-status Report
脱炭素社会構築への貢献を目的とした焼成工程を省略したセメントの開発
Project/Area Number |
20K21014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (60709723)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | アルカリ活性材料 / 石灰石微粉末 / メタカオリン / 高炉スラグ微粉末 / 熱力学的相平衡計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は副産物・廃棄物を多量に使用し,さらにはセメントの焼成工程を省いた新しい建設材料を創生することで,持続可能な開発目標(SDGs)でもテーマに挙げられている脱炭素技術への貢献を目指すものである.なお,本研究で開発を目指している材料はジオポリマーとは異なり,主要相としてカルシウムシリケート水和物やアルミネートフェライトモノフェイズなどのセメント水和物が析出するようにデザインすることを目的としているため「焼成工程を省いたセメント」と記述している. 2020年度については,初めに当該研究の進め方について検討し,まずは熱力学的相平衡計算を実行することで安定して析出する水和物群を予測して,その後にこの予測にしたがってパイロット試験で実際に硬化体を作製するというフローで研究を開始した. 熱力学的相平衡計算では,石灰石微粉末と高炉スラグ微粉末,メタカオリンの混合比率を変えて計算を実行し,従来のセメント水和物が主要相として析出するような安定して硬化する可能性の高い配合を複数個選定した. パイロット試験では選定した配合を実際に練り混ぜて硬化するかを確認した.その結果,計算通り硬化する配合もあれば,計算とは異なる結果が得られるなど一部で計算と実験の解釈について化学分析などにより詳細に検討する必要があるものも確認できた.ただし,現状では一般的なセメントペーストと同等の強度を発現するものは得られなかったため,さらに熱力学的相平衡計算で配合を選定し,実験を繰り返す必要があることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は研究初年度ということもありパイロット試験までしか行っていないが,熱力学的相平衡計算によって配合を選定するという手法にある程度の信頼性が確認できたため,2021年度以降は研究計画通り進行できると考えられたため,おおむね順調に進展していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は2020年度で行った熱力学的相平衡計算と練混ぜ実験の両方を並行して実施して最適な鉱物質混和材(石灰石微粉末・高炉スラグ微粉末・メタカオリン)の混合比率を選定していく予定である. なお,上記に挙げた鉱物質混和材以外にもカルシウムの供給源として二水セッコウの混合についても着想しており,より強固な硬化体を作製できるよう考えている.加えて,パイロット試験では強アルカリ溶液を使用して硬化体を作製したが,研究計画書にも記載した通り,より安全に硬化体が作製できるようにできる限りアルカリ溶液の濃度も低下させることを考えており,この点も踏まえてアルカリとシリカの供給源として廃ガラスを使用した実験も2021年度から平衡して行う予定である.
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