2021 Fiscal Year Research-status Report
脱炭素社会構築への貢献を目的とした焼成工程を省略したセメントの開発
Project/Area Number |
20K21014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (60709723)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | アルカリ活性材料 / 高炉スラグ微粉末 / 二水セッコウ / 炭酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
セメント産業における二酸化炭素排出量の大部分はセメント製造時の焼成工程において化石燃料を多量に使用することに加え,原料である石灰石の脱炭酸反応に起因する.現在では地球温暖化への危機意識の高まりから,当該分野において脱炭素社会に寄与する目的でセメントの使用量を減じる方策の検討が進められている.今年度は,セメントを使用せずに高炉スラグ微粉末(GGBS)とメタカオリン(MK),二水セッコウ(以下,Gyp),炭酸カルシウムを結合材とした硬化体を作製し,圧縮強度試験と粉末X線回折(以下,XRD)による相組成の同定を行い,硬化体の強度発現性と相組成の変化の関係性を評価した. その結果,ポルトランドセメントを使用せずとも20℃,封緘養生の条件下で材齢28日において20 MPa程度の圧縮強度を得ることができた.加えて,結合材として用いた二水セッコウや炭酸カルシウムも水和物の生成に寄与しており,これらを適切に混合することで良好な強度発現性を獲得できることを明らかにした.具体的には,初期の段階でモル体積の大きなエトリンガイトが生成し,その後,エトリンガイトと比較してモル体積の小さなAFm相にエトリンガイトが変化した場合には強度発現性が小さくなる傾向が確認できた.その一方で,初期に生成したエトリンガイトが長期で残存する場合,あるいは,初期からAFm相で安定している場合においては良好な強度発現性を示すことを明らかにした. 今年度の研究において最も大きな成果はアルカリ活性材料に炭酸カルシウムを適量添加することで強度発現性が向上する可能性を見出した点にある.現在の環境問題の解決すべき課題の一つとして回収した二酸化炭素の有効利活用があるが,今年度得られた成果はこの課題解決の一助となり得ると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はセメントを使用しない副産物を中心とした結合材の開発において,強度発現性を確保する水和物の経時的な生成挙動を明らかにすることができた.この点は,今後の研究の推進にも非常に重要なポイントであるため,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究はアルカリ活性材料はアルカリ溶液を練混ぜ水として使用することで硬化させてきた.ただし,本研究の目的の一つとしてアルカリ溶液を使用しないでアルカリ活性材料を硬化させることが挙げられる. 今後は,アルカリを溶出する特性のある骨材を使用することで,より安全に製造できるアルカリ活性材料の開発を目指す.さらには,炭酸カルシウムを結合材に添加することで良好な強度発現性が得られることがわかったため,より炭酸カルシウムを添加できる配合を模索することで脱炭素社会に貢献できるような材料開発を推進していく.
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Causes of Carryover |
今年度は材料設計を中心に実施しており,長期材齢の供試体等の作製はなかったため,作製した供試体数が少なく,次年度使用額が生じた.次年度は上記の長期材齢用の供試体を作製するため,この作製費に次年度使用額を充てる予定である.
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