2020 Fiscal Year Research-status Report
ICレコーダーを用いて録音した波浪音による現地波浪情報のリアルタイム推定法の確立
Project/Area Number |
20K21021
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 崇之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (90397084)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 波高予測 / ICレコーダ / リアルタイム |
Outline of Annual Research Achievements |
波高や砕波形態等をリアルタイムで把握することは,沿岸地域の災害発生や海岸侵食の危険性などが予測を推定できる重要な情報となる.しかし,継続的に安価にデータを取得することは難しい.上記の問題を解決するため,本研究では海岸に響き渡る波浪音に着目する.海岸では砕波や遡上などにより絶えず音が響いている.これらの音は波の大きさや砕波形式等によって異なるため,それぞれの海岸地形特性により響く音も異なる.そこで,波浪音を陸上部において計測し,さらに,海岸地形形状と相関の高い底質中央粒径をパラメータとして加えることにより,多くの海岸で適用可能な「音の強弱や周波数特性等から波高や砕波形式などの波浪情報をリアルタイムに推定する」モデルを構築することを目的とする.本研究では,波浪場をより簡易,安価に計測できるよう陸上部にて波浪音をICレコーダーにより観測し,その時々の騒音特性を解析検討することで,波浪のリアルタイム推定を試みる. 令和2年度においては,茨城県波崎海岸に位置する波崎海洋研究施設において,平均汀線位置から陸側に114 m,平均海面上11.6 mにて波浪音の観測を行い,この音圧レベルを用いた有義波高の推定を試みた.解析には2020年10月20日から11月17日に計測した各種1時間毎の平均値を使用した.始めに,騒音計を用いて推定を行った結果,既往研究と同様に概ねよく推定できることが確認された(R2 = 0.51).次に,安価かつ容易な方法としてICレコーダでの波高推定を行った.ICレコーダによる音圧レベル,相対偏差等を用いて推定を試みたが,R2 = 0.15に留まる結果となった.そこで,計測された過去1.5日分の音圧レベルと有義波高から波高の推定式を導き,その後の12時間をこの推定式で求める方法を実施した.その結果,やや時間遅れが生じてしまうものの精度よく推定できることがわかった(R2 = 0.64).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
波崎海岸においての観測は,当初予定よりも期間は短くなってしまったが,騒音計,ICレコーダともに取得ができた.それぞれの波高データとの比較を行い,波高推定を実施した結果,騒音計については波の周期にかかわる変数を加えることでよい推定ができることが再度検証された.ICレコーダに関しては,騒音計で見られた何も周期に関係する変数が今回取得されたデータには含まれておらず,騒音計とは異なる形で推定しなければならないことが明らかとなった.これは,取得される周波数帯が騒音計と異なることが影響したと考えられた.上記のように,騒音計,ICレコーダを用いた観測により波高推定に関し一定の結果は得られたと考えている.しかし,コロナ渦の影響を受けて観測期間が短くなり,また,相模灘での観測を予定していたが,こちらについては適地選定などの予備調査の実施にとどまり,本観測を実施するまでにはいかなかった.今後の研究の推進方針に詳細を記載するが,令和3年度に関しては,波崎海岸での長期観測を実施するとともに,他海岸への適用に向けての検討のため,相模灘海岸での観測を短期間ごとでも取得することを試みる.また,コロナ禍の影響を受けて現地調査が困難となる可能性を考え,本学所有の造波水路を用いた検討も加えデータの取得に努め,波浪音による波高推定の精度向上,他海岸への適用に向けての検討を継続する.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の波崎海岸での観測は,港湾空港技術研究所の施設を使用させていただいたこともあり,問題なく実施できた.しかし,観測時,高波浪の襲来はなく比較的穏やかな波浪場であった.解析においても一定の成果は得られたものの,高波浪時のデータ取得ができず,また,ICレコーダを用いた推定に関しても新たな推定パラメータが必要であることが示唆される結果が得られた.以上のことから,令和3年度に関してはより長期間の観測を実施し,ICレコーダ適用についての検討を継続させる. 一方,他海岸への適用に向け本手法を一般化させるため,相模灘での観測を計画している.本事項は昨年度も実施予定であったが,コロナ渦の影響を受け適地選定のみにとどまる結果となった.本年は,選定した各地点において数週間の観測を実施し,波崎海岸にて得られた推定手法の一般化を試みる.ただし,本年においてもコロナ渦の影響を受けて観測が再度困難となる可能性は否定できない.そこで,観測は極力短期間で終了できるようにし,高波浪イベント,低波浪イベントをそれぞれ数日オーダーで観測するなど工夫し,データの取得を試みることとする.相模灘海岸での観測が困難となった場合にそなえ,波浪特性と波浪音との関連性について,室内実験による検討を追加することとする.現地調査と同様に,汀線陸側にセンサーを設置し,各種波浪場(不規則波)を造波させ,波浪音と波高の関係性を検討する.
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Causes of Carryover |
令和2年度については,波崎海岸での観測は期間が短くなってしまったものの実施することができ,解析を行い現在論文投稿中である.しかし,コロナ禍の影響もあり,予定していた相模灘海岸の3地点での観測を中止せざるを得ない状況となった.そのため,現地観測の際に必要としていた機器,観測アレイ構築費分が残額として残る形となった.加えて,参加を予定していた国際学会がすべて中止,もしくはオンライン開催となり,海外出張費についても使用することがなく残額として記載されている. 令和3年度に関してもコロナ禍のこともあり現地観測は困難であることが考えられる.そこで,波崎海岸での観測に関しては長期間データの取得を目指し,また,相模灘海岸での観測に関しては,短期間での観測を数回実施することにより,解析に必要となる最低限のデータ取得をまずは目指すこととする.また,室内実験を新たに実施することとし,現地海岸にて実施した観測条件に合わせ騒音計とICレコーダによる測定を行う.この実験により,両者の違いを把握するとともに,造波実験条件を変更することにより騒音計,ICレコーダによる波高推定に関する考察を実施することとする.
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