2020 Fiscal Year Research-status Report
熱注入による免震ゴム支承の潜在的自己治癒能力の解放
Project/Area Number |
20K21028
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 正太郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70346815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
京谷 孝史 東北大学, 工学研究科, 教授 (00186347)
松原 成志朗 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40823638)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ゴム / 免振 / 熱 / 自己治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震履歴により免震ゴムは損傷を受け,揺れの減衰能力が低下する.一方,ゴム材料は潜在的に自己治癒能力を有しており,その能力は熱を与えることで引き出すことができる.当研究はビルの廃熱などを利用してゴムの自己治癒能力を積極的に引き出す仕組みを新たに構築することを目的とする.また,その一環として,自己治癒能力を利用したゴムの損傷回復が構造物の免震機構に与える効果を定量的に評価するために,損傷回復効果を再現可能な数理モデルを構築し,実験を通してその妥当性を評価することも目指している. 本年度は有限変形理論に基づく超弾性構成則をベースにゴムの損傷および回復現象をモデル化した.ひずみエネルギー関数の等値面を損傷曲面として損傷の発展を考えるモデルにおいて高温なほど速やかに損傷回復が生じるモデルを構築した.既往の研究においても損傷回復を扱ったモデルはあるが,熱力学第二法則を侵さないために,損傷回復は自然状態に限られていたが,そのような制約を受けることのないモデルの開発に成功した.このモデルを実装した熱連成解析コードを開発し,ゴム試験片を対象に数値解析を行った.その結果,ゴムの繰返し載荷試験で観察される閉じたヒステリシスループが損傷回復現象によって引き起こされている可能性を新たに見出した. さらに,免振ゴムの損傷およびその回復が構造物の地震時応答に与える影響について数値解析的に調べることに着手した.地震時に損傷が進展することで揺れが低減される可能性に加え,損傷を回復させることで同規模の地震に対して同様な効果が持続的に得られる可能性があることを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴムの損傷および損傷回復現象を再現可能なモデルを開発することに成功した.加えて同構成モデルを実装した熱連成解析コードを開発し,損傷回復を考慮することで閉じたヒステリシスループが描かれることを見出した.これはゴムの新たな物性に関する新しい知見であると言える. 並行して,損傷進展を考慮した動的解析を実施し,免振ゴムの損傷進展が構造物の地震時応答に与える影響について当初の予想に沿う結果を得ることができた. 研究は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は損傷回復まで考慮した熱連成解析コードと,損傷の進展のみを考慮した動的解析コードを組合せ,単一のコードで熱連成解析と動的解析を実施することを目指す. さらに,実験装置を用いてゴムの損傷回復特性を決めるパラメータを同定し,実構造物に対して損傷回復が構造物の揺れの低減に対してどの程度の効果を発揮するのか定量的に調べることを目指す.
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあり,旅費の使用額が予定よりも減ったために次年度使用額が生じた. 次年度のゴム試験片の購入代金として活用することを計画する.
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