2021 Fiscal Year Research-status Report
アジア大都市圏未公認集住地施策の先端的展開からみる脱規準と公認化による都市計画
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20K21033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神吉 紀世子 京都大学, 工学研究科, 教授 (70243061)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 未公認集住地 / アジア大都市 / コミュニティ / 公認化 / 居住環境 / 都市計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアジア(とくに東南アジア)の大都市を主たる研究対象地としていることから、コロナ禍によって大幅に影響を受けているものの、令和2年度終盤にはタイ・バンコクの研究対象地においてオンライン・インタビューを実現でき、令和3年度も引き続きその地域の研究を進めている。この事例は、バンコク市街地が急拡大した時代に形成され、当時はスラムとされていた高密度集住地の1つであるが、子どもの遊び支援を通じた住環境向上に取り組も非営利組織があり、親子の活動をベースにした活発な居住者コミュニティ形成が成功していることを評価され、既にインフォーマルなスラムではなく居住権を正式に認められた地域で、住空間は引き続き高密度なままとなっている。非常に興味深い事例地で、先方のオンライン・コミュニケーション対応も良好で、バンコク市内で従来にない感染拡大があった時期をのぞいて、継続して研究を続けることができた。タイからの留学生(大学院生)と共同の研究としていたことから一時的に帰国した際に現地踏査も一部実現し、学術研究レベルの成果に仕上げるための研究を進め、学術論文に投稿済みで一定の成果にまとまりつつある。 同時に、この事例の背景となる、タイのかつてのスラムに対する居住地施策・実績についての情報収集も開始した。制度概要の理解は一定の進捗があったことから、令和4年度にはさらに研究が進捗する見込みである。 議論の機会や発表の機会として日本学術会議での分科会内発表(土木工学・建築学委員会都市・地域デザインの多様なアプローチ分科会)や日本建築学会大会研究協議会資料集への投稿などを行い、本研究に関する様々な意見をもらえるよう努力している。 しかし、もともと主要な研究対象と想定していたインドネシアや台湾での実地調査や現地との打ち合わせ進捗が難しく、令和4年度の取組み方を再検討し、さらに国内事例の取り上げ方を強化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述のように、タイ・バンコクとの共同調査等はコロナ禍で時間はかかるものの、一定の進捗を得ているが、長く制限が続いたインドネシア・ジャカルタ等の対象地については、現地側の負担も大きく研究進捗が難しかった。ジャカルタにて制限が緩和されて以降も、現地の研究協力者の急な仕事繁忙化もあり、現在再び研究協力の相談再開しているところである。タイ・バンコクの進捗した成果からみても、高密度集住地を扱う議論の場合には現地踏査を行うことなしに誤謬のない議論は難しく、重要な対象地であるインドネシアの研究が進んでいないことは「遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
時間はかかったが進捗しているタイを対象とする研究を引き続き完成にむけて注力する。令和4年度は海外調査の可能性が見込めるようになったため、インドネシア現地調査を効果的に行えるように改めて調査計画を練り直した。海外渡航が可能であれば年度内2回の現地での調査を実施する。 一方、国内での発表の機会で得られた意見を参考に、アジア地域以外の「公認化」手法として評価できる対象地事例(あくまでもアジア大都市の研究に役立つ内容として)を取り上げる。法定都市計画による開発制御が確立していると思われる欧州のうちにも、英国の地方行政による景観指導(許可)・フットパス路線の変更認可等が規準に基づく可否判定というよりは、状況にあわせて柔軟に判断する「公認化」手法的特徴がみられるとのことで、現地への訪問可能性や情報収集可能性もおおむね確認できたことから、調査対象に加えることとした。 アジア大都市圏を主眼におきながらも「公認化」が世界的にも用いられるべきアプローチであることが証明できれば本研究計画には非常に重要である。 国内事例について取り上げる対象地を再構成し、京阪神の地方行政による「公認化」的正確をもつ都市計画・地域計画をとりあげ、行政ごとのアプローチの違いと共通点を分析し、タイの対象地研究をはじめインドネシア・英国の調査成果と合わせて比較検討したい。
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Causes of Carryover |
タイ・インドネシアへの渡航による現地調査が令和2、3年度ともに実施できなかったことが最も大きな理由である。コロナ禍の影響は直前の年度には往来していた1年目(令和2年度)よりも、2年目(令和3年目)のほうが大きかったのが実態で、令和3年度のほうが各国のスピーカーを招いたオンライン国際研究集会の開催相談も進み難かった。 令和4年度は海外渡航が可能になる見込みがあるので、令和2・3年度に出来なかった現地調査をぜひとも実施することとし、そのための旅費・人件費に次年度使用額分を使用する。
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Research Products
(4 results)