2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on disaster prevention system for heritage buildings according to global climate change
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20K21037
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
大橋 竜太 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (40272364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 勝久 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (20176613)
後藤 治 工学院大学, 総合研究所(付置研究所), 教授 (50317343)
青柳 由佳 東京家政学院大学, 現代生活学部, 助教 (60713724)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 文化財防災 / 歴史的建造物 / 保存 / 修理 / 気候変動 / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今、文化財建造物が以前より増してさまざまな災害によって被害を受けている。文化財防災については、地震と火災に対する対策を中心に検討されてきたが、台風(強風を含む)、竜巻、落雷、集中豪雨、洪水といった災害による被害も増えており、考慮すべき災害の種類は多様化してきた。当初、これらの災害に対する対応を個々に検討しようとして研究計画を立案してきたが、研究を進めていくなかで、災害別に対応を検討するよりは、総合的に対応していくほうが有効であると認識するようになった。また、九州の豪雨被害や千葉県の台風被害について悉皆的に調査する予定であったが、新型コロナ・ウィルス感染症の流布のため、現地調査を受け入れてもらうことが困難であり、なかなか調査に着手できずにいたが、その間、被害を受けた地域では、さまざまな種類の被災調査が行われており、そのなかには文化財建造物を対象とするものもあり、それらの情報を用いることで、ある程度、現地調査の不足を補うことができることが明らかになった。 また、令和3年2月13日に、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生し、東北・関東地方の広い範囲で文化財建造物にも被害があった。研究代表者は、11年前の東日本大震災の際に、この地域の文化財建造物の被災調査に参加しており、その際の被災状況と比較するとともに、東日本大震災後に修復された箇所が、新たに発生した地震で、どのような影響を受けたのかを調査した。土壁への寒冷紗の挿入等、歴史的建造物にも現代構法の採用が有効に働いているものもあったが、同じ箇所が被害を繰り返しているものも多く、何らかの対応が必要であるとの結論に至った。しかし、こうしているうちに令和4年3月16日、再度、最大深度6強の地震が同地区で発生し、歴史的建造物が大きな被害を受けた。現在、その状況を調査しはじめたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、研究を当初の計画通りに進めることができず、研究計画の変更を余儀なくされている。 当初、建造物の被害について、災害が発生した地域で悉皆的な調査を実施しようとしていたが、コロナ禍によって、関係者の協力を必要とする通常の聞き取り調査が困難であり、目標を達成することができなかった。そのため、申請者らが修理工事等に関わっている文化財建造物を中心に、その防災対応について、問題点や課題を整理することにした。そのひとつとして、解体修理が継続中である群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原の郷蔵(村指定文化財)について、災害との関係を考察してきた。ここで、天明3(1783)年の浅間山の噴火直後に建てられたと伝えられる板倉の災害対応について検討したが、噴火への対応については特に見出すことができなかった。その理由として、この建築は噴火直後ではなく、50~60年が経過した段階で建設されたことが明らかになり、板倉に土を塗り込める手法は、火山灰の対応を考慮した可能性もあるが、それよりはこの地域の伝統構法であると考えた方がよいとの結論に至った。 また、令和3年2月13日の福島県沖地震による被害を東日本大震災時の被害と比較考察を行なった。しかし、令和4年3月14日にも、同地域で最大震度6強の地震が再度発生したので、これら3つの地震の被害について比較検討している最中である。一方で、文化財防災を取り巻く環境は変化しつつあり、文化財防災センター(令和2年10月発足)と日本建築学会等が協定を結び(令和4年3月11日締結)、合同で調査を開始している。今後、各団体が共同で行う調査が計画されており、調査員と情報を交換しつつ、被災状況と防災対策の関係について検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ・ウィルス感染症の流行により、当初計画していた研究の遂行が困難なことが多く、また、今後この状態が急速に改善されるとは考えにくいため、計画の変更が必要と考えている。この状況では、不特定多数の関係者から情報を集めるのは困難と考え、悉皆的な調査は断念し、すでに調査が実施されているもの、また、各種団体が実施した調査の結果、これから実施しようとしている調査の結果等をもとに、研究を進めていくことにする。具体的には、九州の日田の水害後に大分県のヘリテージマネージャーが実施した文化財の被害調査、また、熊本県のヘリテージマネージャーが現在取り組んでいる人吉の河川氾濫の対応等、九州での水害を中心とする災害に対する取り組みについて関係者から情報提供をいただく予定である。 また、令和4年3月16日に発生した福島県沖地震の文化財の被害に対しては、文化財防災センターが主導し、各種団体が協力している被災調査が進行中である。被災地域は、ほぼ1年前の令和3年2月13日にも地震被害を受けており、さらに11年前の東日本大震災でも被害を受けている。そこで、3つの地震での被害と地震後の修復との関係について検討を加えていく。特に、伝統的建造物群保存地域の多数の特定物件が被害を受けている宮城県の村田町村田伝統的建造物群保存地区については、担当者から再度の聞き取り調査を行なうとともに、被災状況の現地調査を実施し、総合的な災害対策について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、当初、予定していた現地調査のほとんどを実施することができなかったため、今年度も調査のための旅費として計上していた予算が、予定通り執行できなかった。しかし、昨年度後半から、状況が少しずつ変化してきたため、平成4年度は、感染予防を徹底したうえで、当初予定に少しずつ戻りながら、現地調査を実施していく予定である。
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