2020 Fiscal Year Research-status Report
性能等級概念を導入した新しい防火設計フレームワークの構築
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20K21040
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Research Institution | National Institute for Land and Infrastructure Management |
Principal Investigator |
樋本 圭佑 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (90436527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 嘉一 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 主任研究員 (90398818)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 防火設計 / 避難安全検証法 / 性能等級 / 高度な防火性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来,建築物の防火設計においては,経験的に設定された単一の火災外力の下で,設計対象建築物の安全性を検証する枠組みを採用してきた.こうした枠組み(防火設計フレームワーク)は,建築基準法により示される「最低限確保すべき水準」を満たしていることを確認する上では有効であるが,基本的に,これを上回る防火性能を位置づけることができない.本研究では,階層化された複数の火災外力の下での建築物の安全性を検証する新しい防火設計フレームワークを構築する.これにより,建築物の防火性能の等級化を行えるようにし,最低水準を上回る高度な防火性能の評価を可能にする. 建築物の避難安全性能の検証においては,火災が発生した場合の火源の成長速度(火災成長率)を外力とみなし,これによって建築物内部に煙が拡散する中で,在館者が安全に避難できることを検証する.本年度は,1995年から2019年にわたる計24年間の消防庁火災報告を利用して,計19種類の用途の建築物の火災成長率の確率分布を推定した.従来,火災成長率の確率分布は,事例の数が比較的多い住居や事務所といった用途についてのみ調べられていた.本研究では,階層ベイズ分析手法を導入することで,事例の数が少ない用途についても火災成長率の推定を行えるようにした.この結果,避難安全検証法において採用される火災成長率は,単位面積あたりの発熱量が小さい用途において,実態に比べて低く設定される一方で,単位面積当たりの発熱量が大きい用途では,実態を大きく上回る水準に設定されている可能性があることが明らかとなった.今後,こうした確率分布に基づいて,設計火災外力の設定を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,計19種類の用途の建築物における火災成長率の確率分布を推定することができた.これは,階層化された複数の火災外力を検討するための基盤となるものであり,この成果により,次年度以降の検討を進めるための準備ができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度と同様の手続きに基づいて,火災被害(例えば,死傷者数,焼損面積,損害額など)の確率分布を明らかにする.さらに,火災成長率と火災被害の関係を定量化することで,一定の水準の火災被害(例えば,確率分布における上位5%,25%,50%水準)をもたらす火災成長率を逆算し,これらを避難安全検証における想定火災外力として位置付けることを検討する.このように,火災外力である火災成長率を,火災被害の水準を結びつけることにより,目標とすべき避難全性能の姿を補足しやすくなることが期待される.
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Causes of Carryover |
当該年度に開催される予定であった2件の国際会議が感染症拡大の影響により次年度に延期されたことが,当該年度における使用額が想定を下回った大きな理由である.繰越分は,延期となった国際会議に関連する費用として支出するほか,ケーススタディの検討対象を広げるなど,当初の計画をさらに前進させるための検討に使用する予定である.
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Research Products
(1 results)