2020 Fiscal Year Research-status Report
高圧ロケット燃焼における気液混相拡散火炎のレーザー誘起蛍光計測の研究
Project/Area Number |
20K21042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90709156)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | OH-PLIF / ロケット燃焼 / 水素燃焼 / 高圧燃焼 / 気液混相燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ロケット燃焼を想定した高圧環境における気液混相水素燃焼の基礎現象の解明に向けたOH-PLIFレーザー分光計測技術の開発を行うことを目的とする.高圧ロケット燃焼は実験自体が困難であることや極限環境下における非接触計測技術が未発達であることからその現象が十分に解明されておらず,数値解析研究の検証データも限られている.本研究が取り組むOH-PLIF計測により取得できる瞬時火炎断面の情報は,他の計測手法で得ることは困難であり,高圧ロケット燃焼器の設計に有益な基礎データとなる.初年度である令和2年度は,気液混相水素燃焼を模擬したエタノール気液混相燃焼(大気圧)を用いて計測したOH-PLIF結果を元に,高圧ガス燃焼(~7.0 MPa)へOH(2,2)蛍光バンドPLIF計測を適用する方法を検討し,各種高圧ガス燃焼設備・レーザー計測装置の準備を整えた.また,高圧ロケット燃焼条件下において,OHモル濃度を推定する2方向LIF計測手法および火炎温度を推定するボルツマンプロット法の妥当性を検証するため,大気圧下で既存の校正用バーナーに対する各計測試験を実施し,定量的な計測データを取得した.同様に,本研究実施者らが開発した高圧環境対応の校正バーナーに対して各定量計測を行い,数値計算結果との比較を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は,気液混相水素燃焼に対してOH-PLIF計測を適用するための基礎試験を進めた.はじめに大気圧において,ロケット燃焼を模擬したエタノール気液混相燃焼のOH-PLIF結果を元に,高圧ガス燃焼へOH(2,2)蛍光バンド計測を適用する方法を検討した.高圧ガス燃焼における計測は実施できなかったものの,試験に必要な燃焼設備やレーザー計測装置の準備を整えた.次に,ロケット燃焼条件において定量OH-PLIF計測を適用するための検証データを取得した.既存の大気圧用校正バーナーに対して,OHモル濃度計測を実施した結果,先行研究や数値計算結果と良い一致を示し,2方向LIF計測手法の妥当性が示された.同様に,本研究実施者らが開発した高圧ロケット燃焼条件用の校正バーナーに対するOHモル濃度計測も,大気圧下で数値計算結果と良い一致を示した.一方で,圧力が高い条件ほど数値計算結果との差異が拡大していることも明らかになった.ボルツマンプロット法による火炎温度計測では,実験データを数値計算と比較したところ,燃料流量に対する依存性は確認されたものの,当量比に対する依存性は不十分であり,計測手法の改善が必要である.さらに,燃焼計算上で実施する数値OH-PLIFに向けた論文調査を行い,基本的なレーザー伝播式の計算プログラムを作成した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(令和3年度)は,高圧ガス燃焼(~7.0 MPa)に対するOH(2,2)蛍光バンド計測手法の適用試験を実施する.その結果より,高圧気液混相水素燃焼へ向けた課題抽出を行い,手法や計測装置の改良を図る.JAXAにおける最終的なGH2/LOX気液混相水素燃焼試験は大掛かりで実施回数に厳しい制約があるが,燃焼器は既に製作が完了し,燃焼試験(~7.0 MPa)も実施実績がある.高圧ガス燃焼において計測手法の有効性が確認され次第,GH2/LOX燃焼試験の準備・調整を行う.ロケット燃焼条件下において定量的なOHおよび火炎温度のOH-PLIF計測を確立するために,高圧用校正バーナーの定量計測を本格化する.現在の課題となっている高圧条件下におけるOHモル濃度の実験・数値計算結果の差異を修正するため,論文調査を進め,高圧特有の理論的な背景を明らかにする.また,現在までの結果から,ボルツマンプロット法による火炎温度計測は,各励起線の信号強度が入射レーザー波長に敏感であり,色素レーザーのような線幅(0.15 cm-1)の狭いレーザーを使用する際は,実験方法および計測装置を見直し,再度実験データを取得する必要があると考えられる.さらに,OHの励起過程・発光過程・計測過程をレーザー伝播プログラムに付加し,数値OH-PLIFを構築する.同プログラムを燃焼計算上で実施し,上記実験的な定量計測と照らし合わせることで,その妥当性を検証する.最終的に,定量計測のための特殊な手法を使用せずに取得したOH-PLIF画像にすり合わせる形で,燃焼・OH-PLIF計算を繰り返し行い,逆解析的に定量的な実験結果を導く解析手法を構築する.
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Causes of Carryover |
本研究の最終目標である高圧ロケット燃焼条件における気液混相拡散燃焼の構造および火炎安定化機構の解明のため,この現象を定量的に評価する必要がある.しかし3次元の複雑現象であるため,OH-PLIFの定量性ならびに3次元現象の評価には高精度な数値解析を実施することが重要である.そこで本研究では数値OH-PLIF という新しい手法の構築を行うことを上述した.数値OH-PLIFでは,高圧気液混相燃焼現象を数値解析によって再現した上でレーザー入射および吸収をレーザー伝播式等の分光学的原理に基づいて計算し,さらにOH-PLIFを数値的に求め,実験によるOH-PLIFデータと比較しながら真の燃焼現象を逆問題解析によって求めていく.そのため,3次元燃焼数値解析技術が非常に重要となる.本研究を遂行するため,燃焼数値解析に実績のある博士研究員を概ね4か月間雇用し,数値解析コードおよび手法を確立するとともに,担当の博士課程学生に数値解析法を指導することによって研究の促進を図ることとした.博士研究員の雇用が次年度(平成3年度)であることから,平成2年度研究費の一部を次年度に繰り越して使用することとした.
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Research Products
(3 results)