2023 Fiscal Year Research-status Report
琉球石灰岩における断層摩擦発熱の検出と活断層地震性すべり評価
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20K21050
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 恒太郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40359188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 誠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (70443174)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 与那国島 / 活断層 / ダイレーションテンデンシー / クラック / 透水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、与那国島において地質調査と断層帯におけるクラック解析を実施した。
2022年度に見出した与那国島での活断層(正断層)を対象に、断層周辺に観察されるクラックの分布とクラックの透水性の関係について検討した。与那国島の南東側に位置する活断層の露頭では、断層ガウジで構成される断層コアの幅は約2 m、カタクレーサイトやクラックの発達した岩石で構成されるダメージゾーンの幅は約60 mであった。断層下盤側に分布する約80のクラックについて、ダイレーションテンデンシー(Dilation Tendency: DT)値を計算した。地震の発震機構解から推定した現在の地殻応力場に対するクラックのDT値は概ね0.7以上であった。この結果は、クラックが現在の地殻応力場において、流体を流す可能性が高いことを示している。また、断層コアからの水平距離におけるクラック密度とDT値の関係を調べた。その結果、クラック密度が高い断層コアから約65 mまではDT値が比較的小さく変動し(0.4ー0.9)、割れ目密度が低い65 mから100 mまではDT値が高くほぼ一定(約0.9)であった。
以上のことから与那国島での活断層では、断層コアのみならず断層帯全体の透水性が高いことが明らかとなった。また、これまでの断層データを用いて、宮古島および与那国島の南琉球弧での第四紀の応力場変遷を検討し、地震の発震機構解から推定される現在の応力場は100万年前よりも若い時期に成立したことが初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響があったが、与那国島を対象に地質調査と断層帯におけるクラック解析を実施することができた。2022年度に示した沖縄トラフの南北拡大を反映した与那国島の活断層(正断層)において、地下から高温の熱水が上昇する際の断層帯での透水性の空間分布を明らかにすることができた。
これまでの断層データを踏まえて、宮古島および与那国島の南琉球弧での現在の応力場の成立時期と第四紀の応力場変遷を見出すことができ、今後地震時の断層運動を見出す上で貴重な情報を得ることができた。したがって研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ実現できていない波照間島での地質調査を実施し、地震性すべりを引き起こす活断層が見出せるか検討する。また、沖縄本島中南部に分布する活断層を対象とした地質調査を継続して行い、これまでの研究で明らかになった断層すべりの多様性を考慮しながら、すべりの局所化を反映したスリップゾーンを見出し、活断層における地震性すべり発生の評価を行う。
これまでの宮古島、喜界島、沖縄本島中南部、与那国島、波照間島に分布する活断層調査、断層試料分析・解析結果をまとめ、第四紀の応力場変遷、断層すべりの多様性、断層長さとすべりの局所化を反映したスリップゾーンの有無の関係、琉球石灰岩における摩擦発熱指標の構築、琉球弧・沖縄トラフのテクトニクスと活断層の関連について総括する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの国内感染状況の影響と海況不良による船の欠航の影響で、当初予定していた波照間島の地質調査が実現できなかったため、沖縄本島中南部に分布する活断層の継続地質調査含め、2024年度に実施する。
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