2021 Fiscal Year Research-status Report
Search for victims in rubble using rotating magnetic and acoustic dipoles
Project/Area Number |
20K21051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奈良 高明 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80353423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 圭介 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (20733108)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 逆問題 / レスキュー / 瓦礫埋没者 / 双極子磁場源 / 双極子音源 / 回転音源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,スマートフォンを用いた瓦礫埋没者探索法を開発することである.令和2年度は,探索者が回転双極子磁場源により空間中に磁場を生成し,モバイル端末側の位置を推定する手法を開発した.令和3年度は,音を用いた二種類の探索手法を開発した. 第一の手法は,双極子音場を用いる手法である.二つのスピーカーを逆相で駆動する双極子音源を直交して配置し,異なる周波数で駆動しておく.その上で,埋没者がもつスマートフォンのマイクロフォンでその音圧を観測し,スピーカーから見た埋没者の方位角および仰角を推定する手法を導出した.4台のスピーカーから双極子音源対を生成し,数kHzの音を発信することで,方位角,仰角が推定可能であることを実験的に示した. 第二の手法は,回転音源対を用いる手法である.単一周波数の音を発信するスピーカーを回転させると,観測端末では仰角・方位角に応じたドップラーシフトが観測される.そこで,異なる周波数で発振するスピーカーを2台用意し,これを逆向きに回転させることで,距離や初期位相によらずに仰角や方位角が推定可能な手法を導出した.数kHzの音を発信する2台のスピーカーをモーターで4Hz程度で逆向きに回転させ,端末の方位角,仰角が推定可能であることを実験的に示した. 昨年度に開発した回転双極子磁場源を用いる手法は,端末が金属で遮蔽されていても透過して定位できる利点があるが,探索範囲が近距離に限定される.これは磁場源からの距離の三乗に反比例して磁場が減衰することによる.これに対し,双極子音源の場合は距離の二乗に反比例して,回転音源の場合は距離の一乗に反比例して音圧分布が減衰することから,今年度開発した音を用いた手法は,遠距離の探索にも適しているという利点がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置推定のために用いる計測量の一つである音場に関して,定位の基礎理論の構築と実証実験が完了した. 当初計画では双極子音源を回転させることを想定していたが,二対の固定した双極子音源を用い位置推定する手法を開発した.音源を回転させる場合,特に無線で信号を送信する場合には,双極子の位相調整が問題となるが,固定双極子によりこの問題を解決し,双極子音場を正確に生成することで,高精度に位置推定する手法が実現された. さらに当初予定には無かった手法であるが,二つのモノポール音源を逆向きに回転させることで位置推定する手法も導出した.これは音源から距離一乗に反比例する音場を用いる手法であるため,遠距離推定に適した手法になると考えられる.本手法に関しても,基礎的実験により原理検証は行うことができた. 今年度開発した以上の二つの手法は瓦礫埋没者探索における中核となる.以上より,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題は以下の三点にまとめられる. 第一に,音場を用いた定位手法に関して,音の反射体,散乱体が多数ある中での定位性能を検証する.まず有限要素法のシミュレーションにより,双極子音源対および回転音源対を用いた定位手法への影響を評価する.その上で,無響室において,スマートフォンの周りに様々な形状と材質の散乱体を配置した定位実験を行う.続いて,屋外において,地面や大型構造物の反射がある中での定位実験を行う. 第二に,音場を用いた定位手法に関して,どの程度まで探索範囲が拡大できるかを調べる.20-30mを目標に,音圧が距離一乗に反比例する回転音源対を用いる手法と,距離二乗に反比例する双極子音源対を用いる手法を比較し,検証する. 第三に,これまで得られた磁場,音場を用いた手法を統合し,瓦礫埋没者探索システムを構築する.これまで,探索者から見た方位角,仰角をスマートフォンの磁気センサおよびマイクロフォンを用いて推定する手法を開発してきた.まず,その情報をbluetooth low energyで探索者に送信し,移動しながら繰り返し推定できるようにする.20-30m程度の範囲でまず回転音源あるいは双極子音源を用い,数m四方まで近づいたら金属反射の影響をほぼ受けない双極子磁場源を用いて精確に位置推定する探索システムを構築する.
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Causes of Carryover |
研究成果発表を行った国際会議および国内会議がいずれもオンライン開催となり,出張旅費がかからなかった. また,音を用いた探索手法に関して,回転双極子音源でなく固定双極子音源を採用したため,スリップリングや高出力モータが不要となった.モノポール回転音源を用いた探索手法に関しては,軽量スピーカーを研究室保有のモータで回転させBluetoothで信号を送信させたため,消耗品購入に大きな金額がかからなかった.
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