2020 Fiscal Year Research-status Report
Foretold disaster studies in residential region - landslides and asset valuation
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20K21057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
釜井 俊孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (10277379)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 未災 / 地盤災害 / 宅地 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、2011年東北地方太平洋沖地震から10年目にあたる。そこで、仙台市における宅地復興の状況を現地調査した。その結果見えてきた課題は、以下の5点にまとめられる。 ①宅地の復興では、「取り残された人々」や「取り残されたと思う人々」がいて、行政と住民との間のコミュニケーションに問題があった。 ②対策工事(公共事業)の対象選定において、現象が正しく反映されない場合があった。また、より高リスクであるにも関わらず、対策が不十分であったため、二次災害が生じた場合も見られた。これらは、復旧だけで復興を行う事の限界を示している。 ③基本的に必要な復興策は、1978年宮城県沖地震の時に既に提言されていた。それらを実現できなかったことが、2011年の大被害に繋がった。さらに、10年後の現在でも、未だそれらの多くは未達成である。 ④宅地耐震化事業の効果と矛盾、住民参加の不十分さ、地面の復旧へ傾斜という問題点が、この10年を振り返って見えてきた。その根底には、開発推進から変われない日本の都市計画がある。 ⑤税制や法制度を工夫し、財布に直結した対策で住民や開発業者を巻き込むと共に、新たな都市計画思想として、「等高線都市」を提案する。 上記の成果は、『震災後10年 残された課題』と題して、「欠陥住宅全国ネット2020年度大会(仙台)」で公表した(招待講演)。
単行本として刊行した『宅地の防災学-都市と斜面の近現代-』は、日本経済新聞、商業雑誌等の書評欄で取り上げられるなど、高い評価を得た。不動産関係者への理解を深めるため、公益財団法人・不動産流通推進センターが刊行している雑誌、『月刊不動産フォーラム21』で「不動産コンサルティングの地学-都市と斜面の物語-」を連載(今年度は6回)した。さらに、本研究の意義と成果を広報するため、サイト『宅地の未災学』 https://misai.jp/ を開設した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
招待講演を行った「欠陥住宅全国ネット」は、1995年兵庫県南部地震を契機として結成された、弁護士・建築士・研究者・市民による幅広いネットワークである。仙台大会での大会アピールでは、本研究の成果が大幅に取り入れられた。 また、不動産セクターの中心組織の一つである公益財団法人・不動産流通推進センターが発行する雑誌での連載も開始された。この様に、本研究の遂行に必要な人的ネットワークの構築は順調に推移した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築したネットワークに、日弁連消費者問題委員会土地住宅部会(6月に招待講演を予定)を加える。これらを利用して、「災害リスク税」に対する反応を様々な階層で探るとともに、これまでの災害の現象が、地域にどの様に影響し、受容されていったのかを、被災分布と固定資産税分布の重ね合わせによって明らかにする。さらに、防災・減災のため、資産評価に災害予見性を組み入れる方策を検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19(中国ウィルス)の流行によって、現地調査や集会が制限されたため、執行できなかった旅費・集会経費相当額を次年度に使用する事とした。次年度も同様の状況であれば、それらを資料の収集・整理とソフトウェアの購入費に充当し、研究手段を効率化することで研究目的を達成する。
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