2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on disaster case management methods to reduce the number of people who have difficulty in rebuilding their lives after a major disaster
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20K21059
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上月 康則 徳島大学, 環境防災研究センター, 教授 (60225373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮定 章 和歌山大学, 災害科学・レジリエンス共創センター, 特任准教授 (00836851)
井若 和久 徳島大学, 人と地域共創センター, 学術研究員 (50795060)
松重 摩耶 徳島大学, 環境防災研究センター, 学術研究員 (70845205)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 災害ケースマネジメント / 生活困窮 / 生活再建 / 東日本大震災 / 在宅避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
R3年度は,被災地での在宅支援経験を未災地に活かすということを目的に,在宅被災者へのアセスメントシートのトレースを行うこととした.具体的には,宮城県石巻市などで在宅被災者支援を行っている「チーム王冠」と仙台弁護士会によって,発災後4年目に行われた困窮在宅被災世帯へのアセスメントシートの163事例を対象に分析を行った.得られた結果は次のとおりである. (1)4年を経ても生活困窮する163の世帯の家屋損壊判定は,全壊63%,大規模半壊27%,半壊3%,一部損壊2%,被害なし3%,不明2%と,全体の90%の世帯が大規模半壊以上の被害を受けた世帯であった. (2)世帯が抱える問題は,建物,職業,健康,福祉,経済など28種類に分類することができた.その中でも多くの世帯が抱えていた問題は多い順に,「心のケア」で全体の66%,「生活不安」が31%,「住宅再建」の29%であった. (3)問題の発生過程を発生直後から時間を追って解析したところ,事前にあった「健康」「福祉」の問題から,震災直後に発生した「住宅再建」,またある問題から派生して生じた「心のケア」の問題など,問題によって発生する時期や震災の直接間接に影響を受けたものがあることがわかった. (4)特徴的な困窮要因として,(a)地盤沈下や排水ポンプの故障により,降雨時に冠水,床上浸水するといった,震災に続く連続被災した事例,(b)自宅にいたために情報を得ることができず,復興住宅への入居ができなかった事例,(c)自宅の修理のために応急修理制度を利用したために,仮設住宅に入居できなくなった事例などをみいだすことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地での在宅支援経験を未災地に活かすための教訓を見いだすために,支援団体「チーム王冠」に協力いただき,被災者の困窮要因の解析と問題発生の過程をトレースすることができた.また南海トラフ巨大地震に被災したときに徳島県民が困窮するであろう内容,備えるべきことについて考察することもできた. 以上のように,災害ケースマネジメントを南海トラフ巨大地震の発災後に行う基礎的な情報を得ることができたことから,「(2)おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の行う研究内容は次の4点である. (1)支援団体「チーム王冠」に提供されたアセスメントシートの全163事例を詳細に解析し,未災地の徳島に活かす教訓としてまとめる.代表的な事例については直接被災者宅を訪れてヒアリングを行う. (2)得られた教訓が東日本大震災での特異的なものであるのか,または他の災害でも同様の事例があるのかについて,調査を行う. (3)教訓を周知するためのアウトリーチ活動を行う.具体的には,関係する団体との講演会やゲームの開発などを行う (4)以上のことをまとめて,本科研費の研究成果とする.
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって県外への調査が制限され,予定していた調査出張が一回しかできなかった.また人数も限られたことがあり,次年度使用額が生じてしまった.令和4年度は,災害ケースマネジメントの事例収集,被災者および行政担当者へのヒアリングとその解析を行うための,旅費,謝金,物品などに科研費を使用する予定である.
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Research Products
(5 results)