2020 Fiscal Year Research-status Report
Deformation and failure of a slope during drying process after rainfall
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20K21061
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
笹原 克夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90391622)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / 降雨 / 変位 / 給水 / 排水 / クリープ / 変位速度 / 変位加速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は,1) 2018年度に千葉県富津市の土取場の実斜面において,日本地すべり学会とNHKが共同で実施した,人工降雨実験の計測データを入手して行った予備的な検討,と 2) 傾斜させた大型単純せん断試験装置に一定高さで給水する実験,を実施した。 まず「1) 千葉県富津市の実斜面の実験データの検討」については,データの入手を行った。現地斜面の土の物性が不明であるために,現地での土の採取を行い,土質試験を行う必要があるが,コロナ禍のために関東地方への移動ができず,実施できなかった。 次に「2) 傾斜させた大型単純せん断試験」(以降は「傾斜せん断試験」と呼ぶ)については,令和2年度前半はコロナ禍のために,十分な時間を取ることができなかった。よって高度な技術の必要な「排水過程」を伴う実験ケースを実施することができなかったため,給水過程の計測データの検討を行った。全9ケースの実験を行ったが,そのうち3ケースでは給水過程の後半で供試体の体積含水率が飽和体積含水率に達して一定となった状態でせん断が進行した。不飽和条件下でのクリープ変形であると見なすことができる。それらの3ケースのうち2ケースでは崩壊に達したが,後の1ケースでは崩壊には至らなかった。崩壊に達した2ケースでは,体積含水率が一定に達した後の体積変化が非常に小さく,ほぼ定体積と見なせる状態であったのに対して,崩壊に至らなかった1ケースでは,せん断の進行に伴って体積が圧縮した。また崩壊に達した2ケースについて,体積含水率の増加する期間と,その後の体積含水率が一定の期間の変位速度―加速度の関係を比較したところ,両者は一致し,両対数軸上で線形関係となった。つまり体積含水率増加に伴う応力変化に伴うせん断における変位速度-加速度の関係と,体積含水率一定でのクリープ変形中の両者の関係は等しい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実際の地すべりにおける観測データの検討として,千葉県富津市の実斜面で実施した人工降雨の実験データを入手し,さらに現地での土試料の採取と現地調査を試みたが,地主との連絡が取れず,今年度は断念した。他にもいくつかの地すべり地の計測データを収集した。 傾斜せん断試験では一定水高での給水試験を実施した。今年度は給水過程のみの実験ケースを設定し,実施した。研究計画では,給水後に真空ポンプで負圧をかけ,排水させる排水過程の挙動を検討する予定であったが,コロナ禍で今年前半の研究実施が大幅に制限されたために,排水過程の実施は断念した。一定水高での給水過程の試験は,給水高さ(給水速度←つまり降雨強度),模型の傾斜,垂直応力の相違がせん断挙動に与える影響を検討するためのケースの設定の下で実験を実施した。 また傾斜せん断試験のみならず,小型模型斜面でのせん断挙動の実験にも使用可能な,サクションを計測するテンシオメーターの試作と改良を行った。使用する試料(土)は細粒分が多く,土壌水分吸引圧が大きいので,これまで使用していたテンシオメーターの場合は,内部の水の吸い出し速度が速く,模型作成後一晩経過すると,テンシオメーター内の水がほとんど吸い出されて無くなってしまう事態となった。よってさまざまな大きさの水タンクを作成し,それをテンシオメーターと結合することによって,長期間サクションの計測が可能なテンシオメーターを試作した。ただし今年度は試作品を発注するまでにとどまり,完成は来年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の地すべり地における観測データの収集については,国や県の観測するデータの収集に努めると共に,昨年度高知県との協議で,県内で実斜面での降雨実験が可能な個所を発見した。本科研の当初計画にはなかったが,今年度はその箇所での実斜面での人工降雨下での変位等の計測を実施する予定である。そのための資機材の購入と,実験の準備と実施に本科研の経費も支出する。実験においては,人工降雨装置による降雨の後の無降雨期間中も変位や体積含水率,サクション等の計測を続け,排水過程の斜面の挙動を把握する。また可能であれば複数回の降雨を与えてみたい。 傾斜せん断試験については,今年度は給水のみならず,その後真空ポンプを用いて排水させる排水過程における変位やサクション等の計測も行う。そのための資機材の準備を行う。給水過程の影響を見るために,給水過程終了時の最大体積含水率を変化させた実験ケースを設定する。 またこれも本科研の当初計画外であるが,人工降雨下の模型斜面における,排水過程での変位と体積含水率,サクション等の計測を実施する。これも上記の傾斜せん断試験と同様な実験ケースの設定を行う予定である。また降雨イベントは複数回与えるものとする。
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Causes of Carryover |
年度前半の8月まではコロナ禍のため著しく研究活動が制限され,学生に実験を実施させることができなかった。また使用した試料(土)の細粒分が多く,一昨年度に試作したテンシオメーターでは,内部の水が吸い出されて,半日以上の計測が不可能であったことから,その改良のための検討に時間を要した。これらにより実験に使用する資機材,特にテンシオメーターの製作ができなかったために,その分の支出ができなくなった。また排水過程の実験ケースの分の資機材の購入の支出ができなかった。 次年度は上記のテンシオメーターの購入のための支出を行うと共に,排水過程の実験での資機材の購入を行う。 また高知県内での実斜面での人工降雨下での変位等の計測のための資機材の購入,実験の準備と実施に関する支出も行うこととする。
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Research Products
(4 results)