2020 Fiscal Year Research-status Report
“みちびき”を含むGNSS衛星電波の物体反射を利用した土砂災害発生検知システム
Project/Area Number |
20K21065
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Research Institution | Toba National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
山下 晃司 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (20230419)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | GNSS / みちびき / 電波 / 壁面反射 / 土砂災害 / 検知システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本災害検知システムは、GNSS衛星から放射される電波の監視対象エリアでの反射を受信し、その受信強度時系列を利用する。常に天頂方向に位置する“みちびき”衛星による放射電波の対物反射から土石流や急傾斜地の崩壊をリアルタイムに検知し、移動し続ける多数のGNSS衛星の放射電波の対物反射時系列からレーダーのように土砂災害発生領域の広さや起伏粗さを推定する。同システムを構築するためには、①1.5GHz帯左遷円偏波用の高指向性アンテナの開発、②4衛星以下で受信CN比を出力するGNSSモジュールファームウェアの実装、③機械学習を利用した土砂災害検知用ソフトウェアの開発が必要となる。 当初の計画では、災害検知システムのハードウェア部分である①および②を一年目に完成し、2年目に③を実施する予定であった。現在、①の1.5GHz帯左遷円偏波用の高指向性アンテナの開発を終えている。50m離れた位置から半径15mのエリアの壁面からのGNSS電波の反射波を受信することを前提とし、15.0°の指向性を持つエンドファイヤ・ヘリカルアンテナを設計した。円形断面6.0cm、巻数9.5、ピッチ角13.0 °、長さ40cmの左遷偏波用ヘリカルアンテナを製作し、半径12.5cmの円形反射板を取り付けた。受信特性を測定した結果、半値幅36.0°の高い指向性が得られ、また、±30°以外の方向では15dB以上の受信強度差が得られた。校舎のコンクリート壁面を用いてGNSS衛星からの壁面反射波を受信した結果、指向性の範囲内にあるGNSS電波の反射波だけを受信することが確認できた。 ②の4衛星以下で受信CN比を出力するGNSSモジュールファームウェアは、仕様を策定し、株式会社 テレパワーに委託している。しかし、新型コロナによる緊急事態で打ち合わせ、および作業が遅れ、現段階ではまだ完成していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、1年目で災害検知システムのハードウェア部分、すなわち、①1.5GHz帯左遷円偏波用の高指向性アンテナの開発、②4衛星以下で受信CN比を出力するGNSSモジュールファームウェアの実装、を完成して動作実験を行い、2年目に崩落地及びそれ以外のGNSS電波の壁面反射波の受信強度時系列データを収集して②機械学習を利用した土砂災害検知用ソフトウェアの開発を行う計画であった。しかし、①は完了したものの、②は完了していない。 ②のGNSSモジュールファームウェアの委託会社が東京都内であり、間欠的に長期に渡って緊急事態宣言が出されており、研究者と委託会社エンジニアとの仕様の打ち合わせに困難を生じた。また、委託会社はGNSS受信機モジュールメーカとハードウェア仕様や権利関係の調整をしながらのファームウェア実装であるため、緊急事態宣言下での作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
②4衛星以下で受信CN比を出力するGNSSモジュールファームウェアの実装については、ハードウェア仕様の確認と権利関係の調整はほほ達成できたので、今後は仕様を満たすファームウエアの作成をしていく。 ③の機械学習を利用した土砂災害検知用ソフトウェアの開発については、②が完成していないので検知システムの構築は完了していないが、製作した左遷偏波用ヘリカルアンテナと汎用GNSS受信機を用い、実測データの収集を行っている。GNSS電波の受信データは、採石場で露出した壁面と、その横での草木で覆われた壁面とで0.1[s]毎に測定した受信CN比時系列を収集している。さらに、多様な場所でのデータ収集、および悪天候下のデータ収集を進める。 この実測データを用いて、機械学習を利用した土砂災害検知用ソフトウェアの作成を行っていく。②のファームウェアを実装した状態とは異なるが、常に天頂方向に衛星が配置される“みちびき”衛星から到来する測位用電波における監視対象での反射成分を、崩落地とそれ以外で比較すれば、崩落の有無を識別することは可能であると考える。 また、各国の測位システムであるGPSやGLONUS、BeiDouなどの多数の衛星は、所定の軌道上を移動している。この移動する衛星からの電波に対する対象エリアでの反射電波の受信電界強度時系列を一定時間解析すれば、反射状態の異なる領域の広さや反射物の起伏の粗さなどを一定程度推定できると考える。実測データを基に、機械学習を利用した(1)反射状態の異なる領域の広さ、および(2)反射物の起伏の粗さの推定訃報を確立する。 最終的に、②の4衛星以下で受信CN比を出力するGNSSモジュールファームウェアの実装した土砂災害検知システムを構築し、実測によってその有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
令和2年度に使用予定であった国内旅費は、研究打ち合わせと学会発表、実測の交通費の30,000円であり、人件費は180,000円であった。しかし、出張予定先の東京は本校での出張自粛地域であるため、全く使用しなかった。また、本校は9月下旬から12月中旬のみ対面授業を行い、他は遠隔授業であったため、学生を実測補助員としての交通費および謝金は使用しなかった。 GNSSモジュールファームウェアの委託費600,000は、新型コロナによって作業が遅れているために、現在は支払いに至っていない。また、近年の半導体不足のため、計測用ポータブルコンピュータなどの設備備品が年度内に納品されず、購入することができなかった。 その一方で、備品であるGNSS中継器、および消耗品であるRFアンプ、ファイルタ、およびGNSS受信機は、今後の発展を考慮して、L1帯のGNSS電波だけではなく、L2帯のGNSS電波にも対応できるような機種に変更した。両者の結果として、当初2,300,000円の使用予定であったが、623,810円の使用にとどまった。 令和3年度は、2年度に購入できなかった計測用コンピュータなどの設備備品の購入、ファームウェア委託費など、金額の大きな支出が予定れている。また、新型コロナのワクチン接種が進んでいるため、崩落地現地での測定や研究打ち合わせ出張が可能になるので、旅費および謝金も使用予定である。
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