2023 Fiscal Year Research-status Report
Real-time monitoring of marine volcanic activities using remote seafloor observatories
Project/Area Number |
20K21066
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 浩幸 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 主任研究員 (80360759)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉岡 裕子 神戸大学, 海洋底探査センター, 教授 (00359184)
中村 武史 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (40435847)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
|
Keywords | 水中音波 / 非地震性津波 / 火山噴火 / CTBT国際監視制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
海域火山(火山島および海底火山)は、火山活動のグランド・トゥルースが取得しにくく、噴火の予測や早期検知が困難なことが課題となっている。本研究では、水中音波が遠方まで伝播する特性に着目して、既存の海底観測ネットワークを利用して海域の火山活動をリモート監視する手法を考案する。本年度は、南海トラフに設置している光ファイバひずみ計で地震にともなう水中音波ならびに津波が観測されたことから、近傍の海底圧力計や遠地の包括的核実験禁止条約(CTBT)国際監視制度のハイドロフォンアレイによる観測データとの整合性を検証し、光ファイバ技術で海域で発生する水中音波や津波を検知できる可能性を考察した。 2023年10月9日に鳥島近海で発生した地震は、マグニチュードが不明なまま津波をもたらす特異な事象であった。南海トラフの地震活動を監視するために、紀伊水道沖の海底に長さ200 mの光ファイバを展張し、光干渉(位相差)を計測する仕組みで微小のひずみ変化をリアルタイム観測している。鳥島近海で発生した地震では、光ファイバひずみ計は14の水中音波パケットとそれにつづく分散性の津波を観測した。振幅はそれぞれ0.07~0.2 μεと0.003μεであった。約3 km離れたDONET海底津波計でも、1~5 hPaの水中音波ならびに1.4 hPaの津波を観測し、光ファイバひずみ計の卓越周波数と一致した。 一方、CTBT国際監視制度のハイドロフォンアレイでも、広帯域に周波数成分をもつ14の水中音波パケットが明瞭に観測されたことから。CTBTOの科学者と連携してデータ解析を実施した。ハイドロフォンアレイによる水中音波の観測は、震源は鳥島の約80 km南にあることを示唆する結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で海域火山の活動をリモート監視するファシリティは、わが国の地震と津波の海底観測ネットワークを想定している。2023年10月に鳥島近海で発生した地震にともない発生した水中音波は、CTBT国際監視制度のハイドロフォンアレイとわが国の海底観測ネットワークとで調和的であった。CTBTOの科学者と共同で水中音波パケットのデータ解析を進めて、水中音波パケットに含まれる周波数成分や到来方向を考察した。海域火山活動でも同じ仕組みで水中音波を発生するので、本研究の目標達成に向けておおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
鳥島近海で発生した地震にともなう水中音波は、CTBT国際監視制度のハイドロフォンアレイで検知された。わが国の海底観測ネットワークでも同時に観測されたことから、火山活動を監視するための手法を検討する貴重な現場観測データが取得できた。 海域火山活動の監視のために、既存の海底観測ネットワークの観測点(センサ)だけでなく、ハイドロフォンで観測される周波数帯域に感度をもつ光ファイバ技術を併用することを模索する。CTBT国際監視制度のハイドロフォンアレイで観測された水中音波の振幅を精査して、光ファイバで観測された水中音波に関連するひずみ量を定量化する。そして光ファイバによる海域火山活動の観測の可能性や課題を検証して、海域火山活動のリモート監視に資する考察を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は、2023年10月に鳥島近海で発生した地震にともない観測された水中音波のデータ解析を進めた。観測データは、既設の光ファイバひずみ計ならびにCTBT国際監視制度のハイドロフォンアレイを利用した。光ファイバひずみ計の観測データは運営交付金で準備したサーバに保存されている。またハイドロフォンアレイの観測データは、CTBTOの科学者によってデータ解析したので、海洋研究開発機構では追加でサーバを必要としなかった。ただし今後の研究計画では、光ファイバひずみ計とハイドロフォンの現場観測データを統合して解析する必要があるので、ワークステーションならびに大容量NASが不可欠となる。 さらに次年度はCTBTOが主催する水中音波に関するトレーニングおよび国際ワークショップが現地開催されるため、研究代表者と分担者はこれらの会議に参加する。旅費および会議参加費の支出が見込まれる。
|