2020 Fiscal Year Research-status Report
Catalytic degradation mechanism of noble metal nanoparticles on metal oxides
Project/Area Number |
20K21073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (20734156)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 貴金属ナノ粒子 / 原子分解能電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
金などの貴金属ナノ粒子を遷移金属酸化物に担持することにより,バルク貴金属には見られない触媒活性を示すことが発見され,気相反応(排ガス処理)の触媒材料として広く利用されている.しかし,高温下での気相反応では,ナノ粒子の凝集化(粗大化)や基板材料との合金化により触媒特性が急激に低下することが大きな課題となっており,原因の究明が望まれている.本研究では, 原子分解能を有する走査透過型電子顕微鏡(STEM)により貴金属ナノ粒子と金属酸化物の界面原子構造を高温還元雰囲気下において直接観察し,触媒活性点および劣化機構を明らかにすることを目的とする.今年度は,TiO2(110)基板に担持したPtナノ粒子の温度依存性を原子分解能STEM法により直接観察を行った.超高真空中でPtナノ粒子を蒸着すると,結晶性の低い微粒子として蒸着される.しかし,300℃以上の高温に電子顕微鏡中で加熱すると, Ptナノ粒子の粗大化ともに,TiO2(110)基板と特定の方位関係を持って成長することが明らかとなった.また,温度の上昇とともに,基板とナノ粒子の方位関係の分布も変化することも明らかとなった.その一方で,これまでに提案されている,ナノ粒子最表面の酸化に伴うカプセル化などは確認されなかった.したがって,今年度に行った系では,粒子の粗大化が触媒活性の劣化の主な原因であることが示唆された.同様の実験を異なる系に対して行うことにより,様々な視点から触媒活性の劣化原因について検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高真空中でのPt蒸着量を決定するために,特定の条件下(白金ロッドにかかる電圧や真空度)において,カーボン膜状にPtナノ粒子を異なる蒸着時間(1 ~ 60 min)を用いて成長させた.Ptナノ粒子の蒸着時間とサイズ分布の相関を明らかにするため,原子分解能STEMにより直接観察を行い,粒径分布を計測した.短時間(数分)の蒸着領域では,Ptは単原子状態でカーボン膜状に成長するが,蒸着時間の増加に伴って,ナノ粒子化が進行することが分かった.しかし,室温での蒸着では,結晶性が低いため,粗大化が進行しない温度領域での熱処理が触媒活性に重要であることが予想される.また,蒸着時間と粒径分布には一定の相関が得られたため,検量線として今後の蒸着時間の決定に有効活用する.
TiO2(110)基板を電子顕微鏡で観察できる程度まで薄片化(<30 nm)を行い,適切な熱処理を施すことで,原子レベルで平坦なTiO2(110)基板を準備した.表面粗さは原子間力顕微鏡により計測し,ステップーテラス構造が表面に形成されていることを確認した.カーボン膜で決定した検量線をもとに,適切な量のPtをTiO2(110)基板に蒸着した.試料加熱ホルダー(電子顕微鏡)では,温度制御に安定な電源を用いることで,750℃以下の温度領域において原子分解能観察が可能であることが分かった.しかしながら,温度が安定化するのに一定の時間が必要であり,熱平衡に達した状態のナノ粒子しか計測できない点に課題があり,次年度以降に新たな加熱法を検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
TiO2(110)基板上に蒸着したPtナノ粒子の挙動をある程度把握できたため,次年度はAuナノ粒子での検討を行う.Pt系では温度変化によるナノ粒子の成長方位が観察されたため,次年度は高速電子回折(RHEED)による表面構造解析を行う.また,複合酸化物であるSrTiO3なども原子レベルで平坦な表面が得られるため,新たな基板として最適な熱処理条件の探索を行う.得られた原子分解能像では,表面に酸化物層の形成は見られなかったが,より強い証拠を得るために,電子エネルギー損失分光(EELS)などの分光法を用い,ナノ粒子の酸化について検討する.また,基板に含まれる遷移金属との合金化も提案されており,EELSを用いた組成および電子状態分析を行う.
得られた原子分解能像から原子位置を詳細に解析することが可能である.特に断面方向からの観察では,基板とナノ粒子の界面における原子分解能像が得られており,原子位置からナノ粒子や基板の歪み分布の抽出を行う.走査透過型電子顕微鏡(STEM)では,プローブを走査して原子像を取得するため,試料のドリフトや走査コイルの歪みが像に影響を与える.しかし,ナノ界面から離れた基板領域はバルクと同様の格子定数を有していると仮定することにより,界面近傍の歪場の定量的な解析が可能となる.ナノ界面に形成された歪場と触媒活性について,EELSにより得られる電子状態を交え,新たな視点からの触媒性能について検討する.また,得られた知見を多角的な視点から取りまとめ,国際論文および国内外の学会にて発表を行う.
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