2021 Fiscal Year Research-status Report
不均一系触媒作用を目指した無機キラルナノスクロール創製への挑戦
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20K21090
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
會澤 純雄 岩手大学, 理工学部, 准教授 (40333752)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 層状化合物 / 振動円二色性分光法 / 層状複水酸化物 / キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
無機キラル物質創成に向けて本年度は以下2つのことをを明らかにした。粘土鉱物(ホスト)を用いた有機物やキラル金属錯体(ゲスト)とのハイブリッド材料の制御性をあげるためには、ゲスト分子が粘土鉱物の層間で、どのように配列しているかという知見は必要不可欠である。本年度は独自に開発した固体振動円二色性分光法(VCD)を用いて、粘土鉱物(モンモリロナイト)にキラル金属錯体 ([M(phen)3]2+, phen = 1,10-フェナントロリン、M = Ni, Ru、Feなどの金属イオン) のラセミ体を着させた試料について、解析をおこなった。通常はラセミ体ではシグナルは相殺されるが、それには金属イオンを変えることによる工夫から、疑似ラセミ体を用いることで振動を検出することに成功した。その結果、立体選択的なVCDシグナルの増大現象を見出した。理論計算とあわせて、モンモリロナイト層間でのキラルな錯体分子の配列モデルを提案することができた(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 1731:BCSJ賞受賞論文)。この研究によって、長い間謎とされてきたモンモリロナイト中において、ラセミ体の場合とエナンチオマーのみの場合で飽和和吸着量に顕著な差があるという現象への直接的な証拠を得ることができた。 また、LDH(層状複水酸化物)中に硝酸イオンを制御して2つのキラル物質をゲストとした物質を創成した。新規に開発した量子カスケードレーザーを用いた振動円二色性分光法を用いて、LDH中の2つのキラル物質間同士の相互作用の検出を行い、層間中に吸着した分子のキラリティの2次元分布状態を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置開発、合成手法の確立もすすみ、共同研究で無機キラリティにむけて順調に進捗している。また、日本化学会からはBCSJ賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい不斉触媒の創成を目指して、2成分系の層状複水酸化物や1成分系の層状水酸化物とのキラル有機分子との複合化の検討をおこなう。共沈法や混合法による結晶性のよい合成条件を検討する。その後、焼成方法(温度など)の検討をおこない、無機キラル分子の創成を検討する。無機キラル分子の確認のために、新しいキラル分光法の測定方法の検討を行い、無機物質自体のキラリティを検出する。
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Causes of Carryover |
新しい現象が見つかったので、無機キラル分子の条件、およびその解析、測定手法の開発を慎重に詳細検討した。その検証をおこない、有機キラル物質の選定や測定用のセルホルダーの仕様検討を含めて、実施する計画である。また、コロナの影響で学会出張(海外出張を含む)おこなうことができなかった。今後、発表を含めて成果を報告予定である。
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Research Products
(12 results)