2020 Fiscal Year Research-status Report
Atomic-resolution observation of Curie point by cooperative work of RPA robot and human being
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20K21091
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 幸生 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80581991)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | RPA / ロボット / 自動化 / 電子顕微鏡 / 誘電体 / キュリー点 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子分解能走査透過型電子顕微鏡法(STEM)は近年、1 pmに迫る精度で原子位置を決定できるようになり、ナノ物質における結晶構造解析への適用が現実味を帯びてきた。これを材料開発に広く展開する上で最大の障害はSTEM像中に数千程度ある原子位置の解析をコンピュータで行う際に生じている人間の労力と時間の浪費である。 そこで本計画の第1目的はロボティック・プロセスオートメーション(RPA)ロボットと人間の協働で解析を自動・高速化することとした。研究代表者がこれまでに構築してきた原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)像から原子位置を0.1%程度の確度で同定できる「二段階アフィン変換法」を自動化するRPAロボットの開発を目的として、「二段階アフィン変換法」で行う2つの項目、「1.電子顕微鏡装置由来の像歪み係数算出」、「2.解析対象試料の高精度原子位置同定」における全てのコンピュータ作業を自動化することを試みた。 結果の詳細は【現在までの進捗状況】にて述べるが、今年度の研究において、上記の1、2いずれのコンピュータ作業も100%自動化することに成功した。また、2の55枚の原子分解能STEM像解析においては合計で8時間程度の短縮効果が得られただけでなく、ドメイン構造の分率を定量的に解析することができ、材料科学的な知見も得られた。 このように、今回開発したRPAロボットは原子分解能STEM像解析を非常に簡便なものとし得ることが明らかとなった。今年度の研究成果については次年度、論文等において研究成果を公表する予定である。本手法の適用は原子分解能STEM解析をより効率的に進められるだけでなく、広く学界にRPAによる自動データ解析の有効性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究代表者がこれまでに構築してきた原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)像から原子位置を0.1%程度の確度で同定できる「二段階アフィン変換法」を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ロボットの開発を行った。今年度は「二段階アフィン変換法」で行う2つの項目、「1.電子顕微鏡装置由来の像歪み係数算出」、「2.解析対象試料の高精度原子位置同定」における全てのコンピュータ作業を自動化することを試みた。 1の項目における14の作業は全てRPAロボットで自動化することに成功した。この作業は多くの場合、3~5枚程度の原子分解能STEM像に対して行われるが、1枚当たりの所要時間は約5分程度短縮された。また、得られた像歪み係数は人間が手動で行った場合と実質的に同等であった。 2の項目においても必要な17の作業が全て自動化された。研究代表者が従来、測定を行っていた、0.68Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-0.32PbTiO3の原子分解能STEM像(Sato et al., J. Mater. Sci., 56, 1231 (2021))55枚について、解析に要する時間の評価を行った結果、合計8時間弱の短縮効果が確認された。また、解析の結果から、約70%のSTEM像がシングルドメイン領域、残りの30%がマルチドメイン領域からのデータであったという材料科学的な知見も得られた。 100%のコンピュータ作業が自動化されたが、これは当初見込んでいた自動化割合の90~95%を超える想定以上の成果であった。100%の自動化を達成する過程において構築されたExcelテンプレートの改良やUipathとのコンビネーションの構築は小さいながらも技術的なブレークスルーが含まれており、論文としても成果公表の可能性が見込まれるようになったことも望外の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
二年度は、チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノ粒子の原子分解能STEM観察を行い、得られた画像について原子位置の高精度同定をRPAロボットで行う予定である。粒径が異なる数種類の試料(粒径:7nm、12nm、20nm等を想定)について、室温から高温までの多数点の温度において原子分解能STEM像の取得を行って、RPAロボットで高速自動解析する。 格子定数の測定からは格子の形が直方体(正方晶(常誘電相)的)であるか立方体(立方晶(強誘電相)的)であるかを判定し、イオン変位の測定からはチタン(Ti)イオン位置が単位格子の中心にある(常誘電相的)か中心から変位している(強誘電相的)かを判定し、複合的に強誘電性の有無の判定、ならびに、その温度依存性を解明する。 得られた結果からは、強誘電性が消失する温度であるキュリー温度が解明されるはずである。粒径の異なる数種類の試料の結果から、キュリー温度の粒子サイズ依存性についても知見が得られるはずである。これらの結果を総合して、強誘電-常誘電の相転移機構を原子スケールで明らかにするだけでなく、強誘電体におけるサイズ効果の本質に迫る知見が得られると期待する。 上記の計画を遂行するためには、初年度に開発したRPAロボットの仕様を一部変更する必要があると考えられるため、これを行う。特に、ナノ粒子の解析に際しては原子分解能STEM像内の粒子部分のみを抽出する必要があるためにこの仕様を開発して追加する。 最後に、初年度に行ったPRAロボットの開発について、論文執筆、学会発表などの成果公表を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響により、参加を予定していた国内学会、国際学会の多くが中止となり、開催されたものにおいてもオンライン開催となった。これに伴って、計上を予定していた旅費の負担が無くなった。この経費は次年度以降の使用に変更して、一部は物品費として計上し、残りの一部は出張の再開を期待しつつ旅費に充てる計画である。
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[Presentation] 0.8BiFeO3-0.2BaTiO3のナノおよび原子スケール構造解析2020
Author(s)
宮内隆輝, 佐藤幸生, 寺西亮, 金子賢治, Kim Sangwook, 藤井一郎, 上野慎太郎, 中平夕貴, 森吉千佳子, 黒岩芳弘, 和田智志
Organizer
日本物理学会2020年秋季大会
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