2020 Fiscal Year Research-status Report
室温マルチフェロイック薄膜における電場印加磁化反転機構の解明とデバイス動作実証
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20K21092
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北條 元 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90611369)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | マルチフェロイック / 分極反転機構 / 透過電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチフェロイックBiFe0.9Co0.1O3はFe(Co)O6八面体の回転に起因したジャロシンスキー・守谷相互作用により、電気分極に垂直な方向にFe(Co)の傾角スピンによる磁化(弱強磁性)が発現する。電気分極反転の際に八面体の回転パターンが変化することで傾角スピンによる磁化の向きが反転することが、母物質であるBiFeO3について第一原理計算により予想されている。しかしながら、電気分極反転に伴い八面体回転パターンが変化することが実験的に確認されたことはない。一方、原子分解能の透過電子顕微鏡(TEM)を用いて八面体回転パターンを直接観察することが可能であり、分極反転前後の比較をすることで分極反転機構について検討することが可能である。得られる成果は、強誘電体の分極反転機構についての基礎的な知見になるだけでなく、電場によって制御可能な磁気メモリ実現のための重要な知見となることが期待できる。 2020年度は、圧電応答顕微鏡(PFM)を用いて電気分極の方向を反転させ、分極反転前後の領域を同一の視野に含んだTEM試料の作製を試みた。しかしながら、PFMを用いて現実的に書き込みのできる領域は数十μm四方程度と限られており、機械研磨とイオンミリングを組み合わせた従来のTEM試料の加工方法を用いて再現よく所望の領域を観察することは困難であった。そこでTEM試料の加工方法として集束イオンビーム(FIB)装置を採用した。FIBはGaイオンを用いて試料を削るため、一般にGaイオンによる試料ダメージが問題となる。そこで従来の機械研磨と比べても遜色のない品質のTEM試料を得るための加工条件の最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分極反転前後の領域を同一の視野に含んだTEM試料の作製条件の最適化に時間がかかり、まだ観察に至っていないものの、FIBを用いたTEM試料の作製方法は確立しつつある。今後、本手法を用いてTEM試料の加工を行うことで、当初の計画通り電気分極反転の機構解明についての実験を進めることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はこれまでに確立した手法を用いてFIBによるTEM試料加工を行う。まずはPFMを用いて電気分極の反転を行い、反転前後の領域を同一の視野に含んだ状態でのTEM観察を行う。また、引き続きデバイス動作の実証に向けて、電極を用いた電気分極の反転を行い、同様にTEM観察を行う実験も進める。
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Causes of Carryover |
令和二年度はTEM試料の加工条件最適化に注力したため、実験旅費やTEM装置利用料が当初予定していたものよりも少なく済んだ。これらの予算は令和三年度の予算と合わせて当初の予定通り執行する予定である。
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Research Products
(4 results)