2020 Fiscal Year Research-status Report
ダイヤモンド単結晶の高圧下複合欠陥エンジニアリング
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20K21096
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
谷口 尚 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 拠点長 (80354413)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 高圧合成 / カラーセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドは宝石としての輝きのみならず、物質中最大の硬度、熱伝導率を持ち、超硬質材料等として活用されている。更に、ワイドバンドギャップ半導体として、パワーデバイスに向けた研究が活発であり、近年は窒素(N)と空孔の複合欠 (NV-センター)を活用した高感度磁気センシングを始めとする量子応用研究へ拡張している。これらの更なる発展で必要なのが、高純度化と共に適切な元素ドーピング制御であるが、現状でのドーピング技術は立ち遅れている。これは異種元素を寄せ付けない、ダイヤモンド固有の物性の源となる強固な共有結合性の所以である。本研究では、ダイヤモンドへの複合欠陥の導入により、そのドーピングの自由度を確保することを目指す。高圧合成法において新たなコンセプトによる異種元素のドーピング制御技術の革新を目的とする。 2020年度は金属溶媒によるダイヤモンド単結晶の成長時にホウ素、窒素の同時ドーピングを行い、ダイヤモンド中にB-N複合欠陥を形成して格子緩和を促し、更に異種元素のドーピングを行った。基礎となるのは、良質ダイヤモンド単結晶の高圧合成と窒素、ホウ素濃度の精密な制御である。窒素濃度は金属溶媒中に添加するチタン濃度で制御し、ホウ素濃度は炭素原料の純度、或いは意図的に添加するホウ素結晶の量で制御する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素過剰の黄色からホウ素過剰の青色のダイヤモンド結晶とともに、中間領域でほぼ無色のダイヤモンド単結晶が得られた。ホウ素、窒素濃度は1~10ppm程度であり、ESR或いはSIMS分析により評価した。現在まで、各種異種元素の添加も進めている。希土類元素など添加元素が明瞭な起原と言えるカラーセンターは得られていないものの、起源が不明の発光が得られており、その同定が当面の課題であるが研究の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
10ppmレベルでのホウ素、窒素濃度の制御と共に、異種元素の添加を起原とする新たなカラーセンターの探索を継続する。また高圧下,2000℃領域での結晶成長、熱処理も進め、高温下でのドーピング効果、カラーセンターの改質等の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
研究発表成果の国際会議での発表を予定していたがコロナ渦の影響で中止したため、旅費の繰り越しを行った。 また、高圧合成条件を当初計画していた5万気圧と8万気圧から、5万気圧領域に集中したため、8万気圧領域で行う実験の経費を次年度に繰り越した。5万気圧領域におけるダイヤモンド合成に集中した理由は、ホウ素、窒素濃度の制御と定量分析に時間を費やしたことによるが、計画全体の進捗は順調である。
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